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Amvai Denim P001EM

1800年代のインディゴ染めの謎、その至ってナチュラルでシンプルな結末。- ジーンズ追跡 Episode 4

車はほどなくすると成田に到着する。時を同じくしてジェフの乗った便も定刻通りとのアノンスが携帯に入っていた。助手席には靴箱ほどの大きさの、それは決してお世辞にもきれいとは言い難い小包があった。俺がこの箱を小脇に抱えるとまるで映画「スケアクロウ」のアルパチーノのようだ。劇中では再会する子供へのバースディプレゼント。しかし俺の小包だって中身のテンションではスケアクロウに負けてないんだぜ!なあジェフ!!

スケアクロウ [DVD](Amazonより)



こんな偶然は滅多にあるもんじゃない。たまたま会議のためパリを経由して来日するジェフの到着日に合わせる様に、この小包は俺の手元に届いた。差出人は徳島の職人からだった。ジェフ、俺は目を疑ったよ。そして箱を開けると湖面の霧が晴れる様に全てのが解けたんだよ。ジェフ、お前のビックリする顔が目に浮かぶぜ。俺は本当に嬉しいんだ。ただ単にが解けたからじゃない。職人の「推理」とそして「再現技術」、そこには日本でしか出来得ない心が宿っているんだよ。それは自然万物に逆らわず、ケミカルな手法を一切使わず導き出した答えだったんだよ・・・。俺はエンジンを切り、到着ゲートAへ足早に向かった。

身長190cmに近いジェフを見つけるのはいつも容易だ。たかだか半年ぶりの再会なのに、俺は奴に箱の中身を見せたくて主人を待つ子犬の様になっていた。見つけた!ジェフだ・・・。
俺たちはいつもの様に大げさな握手をかわした。直後に開口一番話し始めたのはジェフだった。「おい!manabu!出発直前の男に頼む土産としては難易度が高すぎるぜ、たまたま滞在ホテルがオペラの裏だったからギャラリー・ラファイエットのグルメ館でなんとか手に入ったぜ、ほらよ。」
袋の中身は頼んでいたノルマンディー産のザルグ(海藻)と岩塩が練り込まれたバターだった。冬のこの時期、牡蠣と共に食すサワーブレッドにはなくてはならない俺のお気に入りの逸品だ。
しかし、偶然とは重なる物だ。俺はこみ上げる笑い声を止める事が出来なかった。「ジェフ、1800年代のデニム染色の謎、全て解けたよ、そしてその答えはなジェフ、このバターの旨さと似た理屈だったんだよ。続きは車の中で話そう」。俺たちは休む間もなく羽田から徳島空港へと向かう計画になっていた。

「さあジェフ、箱の中を見てくれ。」恐る恐る開くジェフ。「OH! これは!!」箱の中には3つの濃度に染め分けられたインディゴの糸が入っている。すべて完全な中白(なかじろ)、麩菓子状態だ。俺はジェフに同封されていた職人からのメッセージを読み上げた。

「 ....... 」


不可能と思われていた、かせ染めによる中白


ジェフ、お前が望むなら完全な1800年代手法でデニムを作れるぜ。ただし堅牢度と色の安定は1800年代のレベルさ。これがOKならいつでもGOさ。徳島の現場に着くまでゆっくり考えてくれ。



「manabu、俺はキュレーターとして大きな情報を得た気分だよ。このデータはやってみないと気付けないし、文献を見ても載ってない。最高だ。ありがとう! そういえばmanabuがいい結果を出すと思って祝杯用に送っておいたドンペリ・ヴィンテージのピンク、あれどうした?この車に積んでるよな?今夜こそ飲もうぜ!広島の牡蠣とノルマンディーバター、そしてドンピンだ!」

ジェフすまない、あのドンピンは、最愛のあの娘ととっくに飲んじまったんだ。職人に徳島の旨い酒を聞いてみよう。もちろん今夜は俺がおごるぜ・・・。


※Episode 5は、こちらで次週公開予定です。
※この物語は事実にもとづいたフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。






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Amvai.com Amvai Denim P001EM

¥63,800(税込)

100本限定。Slowgun 小林学氏とファッションエディター 山下英介氏により、徳島県の無形文化財・阿波正藍染のデニムを、ユーロワークパンツスタイルに仕立てた純日本製のデニムパンツ。