
だから、ではないだろうが、フレンチブランドのベストには洒落たものが多い。エルメス、アルニス、アナトミカetc.。これらは総じてVゾーンが狭く、生地やボタンもなかなか主張が強い。たとえば写真で下にかかっているアルニスのベストはシルク製でボタンにも細密な模様が描かれているし、上にかかっているエルメスのものは乗馬柄の刺しゅうが施されている。しかもどちらの裏地もけっこう凝っているから、ジャケットを脱いで見せびらかしたくなるほどに完成されたデザインなのだ。イギリスだとベストとはあくまでスーツの一部というイメージだし、イタリア人やアメリカ人がベストを着ている姿は少々思い浮かべにくい。つまりベストとは合理主義的思考では語れない、余裕あるオッサンのための嗜好品であり、だからこそフレンチブランドのベストは格好いいのだ。
そんな出っ腹を正当化するオッサン論理を開陳した勢いで、久しぶりにエルメスのベストを着てみたところ、なんとボタンが閉まらないではないか。これじゃアウターとしてしか着られない! ならば最終手段の「裏地交換」するしかないか? でもこの凝った裏地を潰すのはもったいないし・・・。そう、やはり物事には限度があるのだ。


















