ミリタリーアイテムがファッションに初めて取り込まれてから、一体どれくらいの年月が過ぎたのだろう?
そもそも、ファッションに目的は無い。そこが最高に面白いんじゃないか!と力強く拳を突き上げることができる一方で、逆に言えば「不要不急品」としていくらでも邪険に扱うことができる日陰者のような存在でもある。だって「衣食住」の中には含まれないんだもの。ファッションは。
それに引き換え、ミリタリーアイテムには目的がある。それは「戦場で着る」という大きな目的。勿論、あらゆる戦争はこの世から無くなってしまえばいい。しかし、現実に戦争は起こり続け、戦場では少しでも自らの身を守るために役立つ衣服=軍服が必要になる。だから、軍服のあらゆるディテールには機能があり、意味があり、目的がある。だからこそ「特定の目的のために作られた軍服を、特定の目的が無いファッションに取り込む」、つまり「戦場ではない場所で軍服を着る」という行為には、少しだけ力が必要になる。
ジョン・レノンが「あえて」軍服に身を包み、War in over!と叫んだのは有名な話。
高円寺「Bon Vieux」のためにNEJIが企画するアイテムの第15弾は、本プロジェクト初の(待望の?)ドレストラウザーズ。「Bon Vieux」店主・大島氏により、数年前からドレススタイルにコーディネートするミリタリーアイテムとして提案され、古着のヒットアイテムとなっていたイギリス軍のNo.2 ドレストラウザーズをベースにしながらも、ある部分は現代的に、ある部分は古典的にアレンジを加えた折衷的トラウザーズ。初期・中期・1990年代~と、それぞれの時代の仕様・ディテールを程よくブレンドすることで、所謂「ミリタリーミックススタイル」というコーディネート概念から軽やかに飛び出した一本。戦闘用ではなく、英国陸軍の式典・儀礼用の標準的な制服として生まれたドレストラウザーズをあくまでも単なる衣服として見つめるところから始まったこの企画は、戦争と平和の境目にある意味には執着せず、軍服であるにも関わらずそこにある種の規律や美しさを求めたイギリス人の美意識にフォーカスしたものになっている。
どことなくオリーブ味を感じるグレーブラウンの曖昧な発色、ベルトループやヒップポケットの仕様、シルエット、生地のチョイスに至るまで緻密に編集されたこのトラウザーズは、ミリタリーアイテムをコーディネートする上でいつも邪魔になる「あえて、逆に」というエクスキューズを必要としない、「普通に」穿ける中立的なポジショニングが気持ちいい。用途不問という意味を込めて「No.0」と名付けた傑作ドレストラウザーズは2025年10月4日(土)に高円寺「Bon Vieux」で発売予定。目的が無い状態を謳歌できるという、ありがたさの凄まじさ。
Bon Vieux 東京都杉並区高円寺南2-14-5 不定休
Instagram@bon_vieux_
1978年生まれ。熊本県出身。10歳の頃に初めて買ったLevi'sをきっかけにしてファッションに興味を持ち始める。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻に興味を持てず、アルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを本格的に決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆などを16年間にわたり手がける。2021年、22年間勤めたビームスを退社。2023年フリーランスとして独立、企画室「NEJI」の主宰として執筆や商品企画、スタイリング/ディレクション、コピーライティングなど多岐にわたる活動を続けている。同年、自身によるブランド「DEAD KENNEDYS CLOTHING」を始動。また、クラウドファンディングで展開するファッションプロジェクト「27」ではコンセプトブックのライティングを担当し、森山大道やサラ・ムーンら世界的アーティストの作品にテキストを加えている。
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