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STORY

タブカラーシャツは謎だ。

BEAMS時代にも、MANHOLE時代にも、独立してDEAD KENNEDYS CLOTHINGを始めてからも、僕はもう10年くらいのあいだ「シャツ」を企画し続けている。一口にシャツといっても、僕が言うソレはカジュアルシャツではなく、ドレスシャツだ。カジュアルシャツとドレスシャツの違いは、ネクタイをすることを前提に作られた襟型・パターンか否かということなので(当然、ネックサイズ表記になっている)、結局僕はネクタイが好きだから=ネクタイ用のシャツを作るのが好きだということになる。もちろん、ワークやミリタリー用に作られたカジュアルシャツにネクタイをすることだって全然OKなんだけど、でもやっぱり「ドレスシャツにネクタイをする」あるいは「ドレスシャツだけどノータイで着る」ときの「ピシっとした感じ」はカジュアルシャツではどうしても再現出来ないので、仮にビジネススーツが絶滅したとしても僕は許される限りしぶとくドレスシャツを作っている(だろう)と思う。

ドレスシャツの形にはバリエーションがそれほど多くは存在しないので、細かなディテール決定の集積でちょっとした全体の違いを表現していくほかない。例えば襟型に関しては(マイナー過ぎるなものはこの際含めないで)大別すると「レギュラー」「ワイド・スプレッド(カッタウェイやセミワイドを含む)」「ボタン・ダウン」「ラウンド」「タブ」、そして礼装用の「ウイング」といったところか。

その中で、僕が個人的に好きな襟型が「タブ」である。初期ビートルズやストーンズは勿論のこと、よく見ると三島由紀夫なんかもタブカラーシャツ姿がキマっている。要するに1960年代あたりに流行った襟型なのだ。が、もう少し辿ると、ウインザー公も見事にタブカラーを着こなしていたりして、この(ちょっとデコラティブな)襟型のルーツはどうやら彼にあるらしい(とする説がある)。

例えば、ボタン・ダウンのルーツには「ポロ競技の際に襟が風でパタパタしないようにボタン留めにした」という説があるけれど、タブカラーの場合は果たして?「ネクタイのノットがコンパクトに持ち上がる」って、それ、機能美のように思えて、実は単なるダンディズムだろう?機能としての理由・必然性がいまいち分からない。要するに、カッコつけ?そんなところも含めて、僕はタブカラーシャツが好きだ。

というわけで20255年初夏、高円寺「Bon Vieux」のためにNEJIが企画したシャツがタブカラーシャツである。


小襟のスナップタブ。ちょっとアメリカンな合理性が香るモダンな顔つきだが、2025年目線で見れば十分に古典的な襟型だろう。



胸ポケット、背ダーツは無し。裾はサイドスリット/スクエアカットだが、パンツインに耐えられるだけの着丈をキープ。夏はタブ襟を留めずに裾出し/袖まくりでショーツと合わせるなど、軽快に着こなしてもらうのも良い。ベージュストライプと赤×紺チェックの2色展開。


サン・ジェルマンのオープンテラスでお茶するかのような気取り顔をして昼酒を飲む。撮影のためとはいえ、随分と演出がかっているような気もするが、5月の風とニットタイは不思議とよく似合っていた。



そもそもタブカラーの出自=「ネクタイのノットをコンパクトに持ち上げる」だなんて、男の自意識過剰もいいところだ。背の低かったウインザー公が「重心を高く見せる」ためにどこぞのシャツ屋で誂えたものなのか、まぁ、自分自身の演出・見せ方にひどくご執心だったのかもしれない。そういったナンセンスに思いを馳せれば、この古典的な襟型は随分と可愛らしいものに思えてくる。ネクタイはしてもしなくても、良い。ただ、襟の隙間にちょこんと居座るタブが男性諸君のチンケなプライドとオーバーラップするとき、重苦しく意味のない毎日は少しだけ気軽で楽しいものになる。まぁ、役立たずでもいいじゃん。そんなもんよ。って、タブ襟が笑っている。かく言う僕もまた、タブ襟好きの単なる役立たずである。

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高円寺「Bon Vieux」のためにNEJIが企画するアイテムの第13弾はクラシカルなタブカラーシャツ。スナップ式のタブは1970年代的アメリカン、厚めの前立てステッチはブリティッシュ、スクエアな裾カットはフレンチ風…。よくよく見れば様々な国の特徴的なディテールを随所に散りばめてあることが分かるけれど、トータルの佇まいはオーセンティックそのもの。ネックサイズは36~42まで幅広くご用意。Bon Vieuxの新しい定番になりそうな傑作タブカラーシャツはレッド×ネイビー系チェックとベージュ系ストライプの2色展開で、2025年5月31日(土)に高円寺「Bon Vieux」で発売予定。

Bon Vieux 東京都杉並区高円寺南2-14-5  不定休
Satoshi Tsuruta

NEJI Organizer鶴田 啓

1978年生まれ。熊本県出身。10歳の頃に初めて買ったLevi'sをきっかけにしてファッションに興味を持ち始める。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻に興味を持てず、アルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを本格的に決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆などを16年間にわたり手がける。2021年、22年間勤めたビームスを退社。2023年フリーランスとして独立、企画室「NEJI」の主宰として執筆や商品企画、スタイリング/ディレクション、コピーライティングなど多岐にわたる活動を続けている。同年、自身によるブランド「DEAD KENNEDYS CLOTHING」を始動。また、クラウドファンディングで展開するファッションプロジェクト「27」ではコンセプトブックのライティングを担当し、森山大道やサラ・ムーンら世界的アーティストの作品にテキストを加えている。