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STORY

フォルムがいっぱい

2025年3月に僕(NEJI)のブランド「DEAD KENNEDYS CLOTHING」(以下、DKC)初の展示会を開くことになった。1年前から構想を練り、緩やかに準備を始めていた。

まずはジャケット&トラウザーズの新型パターンを制作することにした。これまでにDKCでリリースしてきたモデルは「ジャケット2型、パンツ2型」の計4モデルだったが、もう少しバリエーションが欲しいと思った。DKCが展開するのは「NEJIの妄想を形にしたエレガントでエキセントリックでパーソナルなドレスアイテム群」、つまり僕は「ドレスシャツとジャケットとトラウザーズ」しか作らないことでNEJIを束縛すると決めているのだ。ニットも作らないし、Tシャツも作らない。DKCの根底にクラシックなスーツスタイルがあるのだとして、じゃあ「クラシックなスーツスタイル」とは何か?「クラシックとは過去の1地点である」というのが、僕の持論である。しかし、僕らは現在に生きている。過去は過去、現在は現在。クラシックとは(1930年代がどれだけパワフルな時代であろうとも、1970年代がどれだけグラマラスな時代であろうとも、1990年代がどれだけ冷たい時代であろうとも)いわば赤の他人である。だから、現在に生きる僕らのためにはもう少しバリエーション=新しいフォルムが必要だと思った。

半年間、何度も修正を繰り返した末に、ようやくオリジナルのパターンが出来上がった。「ボックスシルエット/3つボタンシングルブレストショート丈ジャケット」「アンコン仕立てカミーチャ袖/4つボタンダブルブレストジャケット」「股上深め/ノープリーツのスリムテーパードトラウザーズ」は、苦心の甲斐もあって大満足の仕上がりだ。これに既存モデルを加えると、ジャケット4型、トラウザーズ3型が用意できたことになる。さて。

てんでバラバラな形をした各モデル、これを繋ぎ合わせていくのがNEJIの仕事。12種類のスタイリングを用意してイメージルックを制作した。モデルを引き受けてくれたのは、プロダンスリーグ「D. LEAGUE(Dリーグ)」でも圧倒的エース級の活躍を見せる、ダンサー/表現者のKELO氏。

























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ひとつのグレーフランネルから生まれる、幾つかのフォルム。

メンズドレスクロージングの中で最も普遍的な素材のひとつであるグレーフランネルを使用した4着のジャケット、3着のトラウザーズ。上下の組み合わせを入れ替えることで変化する12種類のスタイリング、そしてフォルム。人間の血肉が生きる「静と動」の中で、同一のグレーフランネルはどのように動き、停止するのか。「form(仏:forme)」とは「構造」「(伝統的な)型」「体つき」「姿」「様式」などを意味する英単語である。

フォルムと肉体の関係性にフォーカスした、NEJIのNEJIによるNEJIのための習作<STUDY No.31『FORMED』>。ここで展開される12種類のフォルムに対してNEJIが用意したのはEli Keszlerによる12種類のトラックと各スタイリングのフォルムからイメージする12種類の言葉。ダンサー/表現者である平位蛙 a.k.a KELOが「静止したフォルム/固定された言葉」を「躍動する肉体/運動する衣服」へ鮮やかに変換する姿をワンテイクでカメラに収めた。即興で行われたパフォーマンス&シューティングが、過去に従属するスーツスタイルの硬直を軽やかに覆し、現在に解き放つ。

STUDY No.31『FORMED』
PERFORMANCE:KELO
MOVIE:aanrii
PHOTOGRAPHY:TAIKI KASUGA
STYLING/DIRECTION/WORDS/TEXT:NEJI

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「現在」とは過去に積み重ねられた地層のてっぺんにちょこんと乗っかっているだけの不安定な存在に過ぎない。ソレは恐るべきスピードで、あっという間に「現在」ではない「過去」に変容してしまう。僕らは不安定の中でバランスを取りながら「現在」を楽しむしかない。12種類のフォルムに対してNEJIが与えた12種類の言葉。その言葉を即興でダンスパフォーマンスに変えてくれたKELO氏のムービー(一発撮り)はNEJIのInstagramで3月半ばごろに公開予定です。


Satoshi Tsuruta

NEJI Organizer鶴田 啓

1978年生まれ。熊本県出身。10歳の頃に初めて買ったLevi'sをきっかけにしてファッションに興味を持ち始める。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻に興味を持てず、アルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを本格的に決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆などを16年間にわたり手がける。2021年、22年間勤めたビームスを退社。2023年フリーランスとして独立、企画室「NEJI」の主宰として執筆や商品企画、スタイリング/ディレクション、コピーライティングなど多岐にわたる活動を続けている。同年、自身によるブランド「DEAD KENNEDYS CLOTHING」を始動。また、クラウドファンディングで展開するファッションプロジェクト「27」ではコンセプトブックのライティングを担当し、森山大道やサラ・ムーンら世界的アーティストの作品にテキストを加えている。