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STORY

世界を旅した70'S風コーデュロイスーツ

紅葉の季節の大きな楽しみといったら、5年くらい前につくったキツネ色のコーデュロイスーツを着ることだ。ウディ・アレン、ダスティン・ホフマン、ウェス・アンダーソン、そしてウェスの分身である Mr.FOX ・・・。僕の敬愛するカルチャーヒーローたちは、み〜んなこの色のスーツを着ていたんだから。

スーツは3ピースでつくったが、ベストは着ないことが多い。

つくったのは渋谷の「テーラーケイド」。基本的にはアメリカントラッドスタイルなのだが、パンツはテーパードではなく、少しフレア気味にも見える、ひざ下ストレートに。まんまトラッドじゃない、70年代後半のムードというのがポイントだ。自慢じゃないが今季プラダがこのテイストのコーデュロイスーツを提案した時には「勝った」と思ったね。例年ならこのスーツにはオックスフォードBDとニットタイというのが定石だが、今季はちょっとひねりを入れて、ハバーザックのカシミア製ラガーシャツを合わせた着こなしが気に入っている。 N.Y. というよりちょっと西海岸のテイストかな。もっと寒くなったら、この上に M-65 を羽織るとちょうどいい。

インナーにはハバーザックで今季買ったカシミア製ラガーシャツを。

足元にはフェラガモのウォーホールモデルで、ちょっと味付けを。

坊主じゃ様にならないから、ベレーやメガネは必須。

コーデュロイスーツは味わいが大切だから、これを着てエコノミークラスに乗って、いろんな都市を旅した。 N.Y. やパリ、トルコ、ベネツィア、そしてモロッコのニオイが染み付いた、自慢のスーツだ。
思いっきり膝が出てもうクリースも入らないし、妻には「老けて見えるからやめて」なんて言われるけれど、これを着て銀杏並木を歩いてるときなんか、個人的には得意満面なのだ。
Eisuke Yamashita

Fashion Editor山下 英介

1976年埼玉県生まれ。大学卒業後いくつかの出版社勤務を経て、2008年からフリーエディターとして活動。創刊時からファッションディレクターとして携わった「MEN’S Precious(小学館)」を、2020年をもって退任。現在は創刊100周年を迎えた月刊誌『文藝春秋』のファッションページを手がけるとともに、2022年1月にWebマガジン『ぼくのおじさん/MON ONCLE(http://www.mononcle.jp)」を創刊、新しいメディアのあり方を模索中。住まいは築50年のマンション、出没地域は神保町や浅草、谷根千。古いものが大好きで、ファッションにおいてもビスポークテーラリング、トラッド、モード、アメリカンカジュアル……。背景にクラシックな文化を感じさせるものなら、なんにでも飛びついてしまうのが悪いくせ。趣味の街歩きをさらに充実させるべく、近年は『ライカM』を入手、旅先での写真撮影に夢中。まだ世界に残された、知られざる名品やファッション文化を伝えるのが夢。