
3年前のトルコ旅行のときには有名なグランドバザールでウズベキスタン人のオヤジにこいつをなんとか売ってほしいとせがまれて、写真左の素敵なコートと物々交換をすることになった。ウール地で、パイピングには贅沢な刺繍が、裏地にはシルクがあしらわれた、とてもロマンチックな逸品である。これを着て成田空港に降り立ったときは、中年バックパッカーみたいでちょっとはずかしかったが。
2年前のモロッコ旅行の際にはエッサウィラの若者にこれをカーペットと交換してくれと1時間くらいつきまとわれて困ったものだ。ごめん、本当は交換してあげたかったけれど、僕はそのとき風邪をひいていたのだよ・・・。
これを着て旅行をするたびに、こんなありふれたコートに、なんでみんなそう目をギラつかせるのかな? と疑問に思ったのだが、よく考えたらトルコやモロッコの人は、日本で70年代に勃発したようなリアルなアメリカンカルチャーブームを経験していないのだ。その微妙な距離感ゆえ、当然アメ横や中田商店系の米軍払い下げ系のお店もない。彼の地の若者たちはみんな一見アメカジ風だが、よーく見るとそれらはディーゼルのようなヨーロッパ経由のアメカジであり、リーバイスやコンバース、ナイキといったリアルなアメカジアイテムを身に着けている人は、ほぼ皆無なのだ。マーケットで働いているような人たちは、そのあたりの情報を知っているがゆえ、本物のアメリカに飢えているのだろう。
ならば今度からイスラム圏を旅行するときは、いざというときは売れそうだし、こいつを1着余計に持って行こうかな? なんて思ったのだが、すぐに諦めた。中田商店はじめ何軒かのミリタリーショップを覗いてみたら MADE IN USA でサイズを含め状態のいい古着はけっこう希少な存在になっており、もはや1万円では買えなくなっている。しかも新品で売っているのはアルファ社の、スリムフィットに変わり果てた中国製。もはや人にあげている場合じゃなかったのである。


















