僕は山城新伍、勝新太郎、松方弘樹etc.といった滅びゆく昭和の豪傑たちの大ファンであるが、このプロ格ジャンルにおいては、彼らに比する豪傑たちがほぼ健在。その伝説はいまだに語り尽くされることなく、泉のようにこんこんと湧きだしているのである。何を言っているか分からないという方は、アントニオ猪木、ドン荒川、長州力、佐山聡、前田日明、橋本真也、獣神サンダー・ライガー、船木誠勝といった名前のあとに「トンパチ」という言葉を加えて検索していただきたい。

実は私も駆け出し編集者の頃に何人かの格闘関係者をインタビューしたことがあるのだが、そろってヤベェ奴らであった。ある有名格闘家は、撮影用にこちらがリースしてきたウエアを当たり前のようにぜ〜んぶ持って帰ったからね。あれ高かったんだぞ!
このジャンルの書き手はおしなべて文章がうまいので、おすすめしたい本は腐るほどにあるのだが、近年面白かったのは柳澤健著『1984年のUWF』(文藝春秋)と、『証言UWF 最後の真実』(宝島社)の2冊である。2017年の1月27日に出版された前者は、プロレス団体「UWF」の誕生と分裂を佐山聡(タイガーマスク)寄りの史観で描いたノンフィクション。それに対して同年5月17日に出版された後者は、前田日明をはじめとする17人の関係者の証言集といった性質の本。たった30年ほど前の話なのに、そのディテールは見事なまでに芥川龍之介の『藪の中』であり、もはや言ってることがぜんぜん違うのだが、それが実に人間臭くて共感してしまうのだ。
しかしこれを読んでいると、新日本プロレスから出奔した「UWF」メンバーたちと、ある人気雑誌から飛び出して新雑誌を立ち上げたものの、1年でポシャって路頭に迷った10年前の自分の姿が重なるような気がしてならない。とすると、猪木役はやっぱりあの人しかいないだろう。僕は前田?佐山? いや、髪型が似ている山崎一夫かもしれない。なんてこった、今になって気付いてしまった! 僕は雑誌業界の「U」だったのである。
今回は全くファッションと関係ない話で正直スマン! でも、いつか『2007年の●●●●』なんて本を出してみたいような気がしなくもなくもない・・・。


















