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STORY

小沢宏の服

仕事の宣伝でたいへん恐縮ですが、先日尊敬するスタイリスト小沢宏さんが新しく手がけたブランド「オザワヒロシ エディストリアル」のカタログ製作を手がけました。8月20日からリニューアルオープンする神楽坂「ラカグ」にて、配布されるそうですよ。
小沢宏さんといえば、私にとっては「エスクワイア日本版」などで洗練されたファッションページを手がけるとともに、名店「メイドイン・ワールド」に携わるなど裏原宿ムーブメントの中枢にいた、おしゃれ業界人の権化。レジェンドとなった今でも旺盛な物欲と若々しい感性を兼ね備えた、僕のお手本となる先輩のひとりです。そんな方にお声がけいただけるなんて、僕も大人になったなあ。
それにしてもこの「エディストリアル」、いろんな意味でとんでもないブランドです。目付け 1kg のカシミアメルトンを使いながらも、つくるのはいわゆるラグジュアリーとかクラシック志向のものではなく、デヴィッド・バーンを彷彿させる超ロング&オーバーサイズのコートやワイドパンツですから。極上の生地や仕立てにこだわりながらも、決してコンサバに逃げることなく、堂々と小沢さん流を貫き通している点が、実に格好いいです。その副産物としてお値段もすごいことになっていますが・・・ぜひ一度見ていただきたいですね!
それにしても小沢宏さんが関わっていた「メイドイン・ワールド」、懐かしいですね。あそこの大ヒットアイテムの代表格といえばラルフローレンの「ビッグポロ」とか「ビッグチノ」ですが、今覚えている人はどのくらいいるのでしょうか? 検索してみたら巨大なポニーマークのポロシャツばかり出てきたので、もう忘れ去られているのかもしれません。これ、今復刻したらきっと売れそうな予感がします。

Eisuke Yamashita

Fashion Editor山下 英介

1976年埼玉県生まれ。大学卒業後いくつかの出版社勤務を経て、2008年からフリーエディターとして活動。創刊時からファッションディレクターとして携わった「MEN’S Precious(小学館)」を、2020年をもって退任。現在は創刊100周年を迎えた月刊誌『文藝春秋』のファッションページを手がけるとともに、2022年1月にWebマガジン『ぼくのおじさん/MON ONCLE(http://www.mononcle.jp)」を創刊、新しいメディアのあり方を模索中。住まいは築50年のマンション、出没地域は神保町や浅草、谷根千。古いものが大好きで、ファッションにおいてもビスポークテーラリング、トラッド、モード、アメリカンカジュアル……。背景にクラシックな文化を感じさせるものなら、なんにでも飛びついてしまうのが悪いくせ。趣味の街歩きをさらに充実させるべく、近年は『ライカM』を入手、旅先での写真撮影に夢中。まだ世界に残された、知られざる名品やファッション文化を伝えるのが夢。