これぞアップデイトのお手本で、ひと目みた瞬間からコレクションしていたアメリカ製のDeadstockコンバースを所有しておく必要が無いと思わせた一足だった。
あれから10数年、アディクトも散々履いたし、スニーカーはジョギング用だけでいいかなと思っていた。
そんな時にArch(アーチ)でキャンバススニーカーを作っているという情報を入手。聞くとミリタリーのラスト(木型)を使ったジムシューズだという。これはアーミーコンバースの進化版に違いないと直感した。
通称アーミーコンバース、70年代から80年代に製造された米軍のジムシューズ。製造元はコンバース社、PFインダストリー社などがコントラクター(生産請負業者)として存在。自分も数足所有していたが、アディクトの出現後に全て放出。薄汚れたプラスチック透明袋の中に納入年とコントラクター名が記載された紙切れがマニア心をくすぐってくれたのは遠い昔。
ほどなくして、そのアーチのジムシューズが手元に到着した。古いアーミーコンバースの仕様など殆ど憶えていないし、細かい違いについて語るつもりも無い。
何故なら、当時のアーミーコンバースはコンバースのオリジナルのラスト(木型)を使っておりアッパーの素材が違うだけの色違いでしかない。
しかし今回アーチが作ったジムシューズはラストが違う。アッパーは当時の雰囲気を残しながら、圧倒的に足にフィットしやすいミリタリーのラスト(木型)を参考に作られている。これこそがミリタリージムシューズだと瞬時に確信した。
アップデイト(より新しいものに変更する)するという事は、新しい技術や新しいデザインを取り入れて進化させる事をいうけど、ミリタリーの木型が何故存在するのか?という事を考えてみると、何故ジムシューズがミリタリーラストじゃなかったのか?というシンプルな思考こそが、アーチ流のアップデイトの考え方の根底にあるのだろう。
Arch x Der SAMMLER solo「US ARMY GYM SHOES」
サイズ展開:6~10(5Hと10Hは売り切れています。次回入荷は未定)
価格:¥22,000
MADE IN TAIWAN
お問い合わせ先:アーチ米村屋 011-281-5560 yonemuraya@archstyle.tv
今回ご紹介するキャンバススニーカーは、ミリタリーラストと呼ばれ足型に沿って少し湾曲(スウィング)している木型を使用しています。 ミリタリーラストは、マンソンラストやネイビーラストという通称で呼ばれていたり、現存するアメリカのシューブランドでは、WWⅠからWWⅡの頃に米軍より支給されたラスト(木型)を現在でも使用する事があり、そのラスト(木型)を当時の品番で呼ぶこともあるようです。少し湾曲(スウィング)しているラスト(木型)という表現が「???」という方も多いと思いますが、人間の足型はストレートな部分はほぼ無く曲線で作られています。そして靴は平面の足型とは別に立体的なカーブの連続で形成されています。その為に木型が存在します。多くのお客様の足型はつま先の部分が親指側に湾曲(スウィング)し、土踏まずの部分でえぐれながら踵の部分にその曲線が繋がっています。現在そのような湾曲(スウィング)したラスト(木型)を使用したスニーカーやレーザーシューズが少ない理由もありますが、その理由については別の機会に書いてみたいと思います。
そして肝心な靴のフィット感は人それぞれに感覚的なものがあると思いますが、土踏まずのカーブにアッパーと中敷きがフィットする感じと踵のホールド感によって心地よさを感じる事が多いと思います。足の指が先端に当たっていたり、ウィズと呼ばれる横幅がキツイ場合は心地良さが半減する為、足の指が自由に動かせるスペースとウィズ(横幅)には少しのゆとりを持たせ、いかに土踏まずと踵をフィットさせるかが重要だと考えています。特に布製の靴は革製の靴に比べてアッパーの伸びがほとんどないといわれており、数回の水洗いによって目詰まりを起こし縮む可能性の方が高いのです。但し着用を繰り返すことでインソールの沈みによるスペースのゆとりが出る事も事実ですので、ウィズのゆとりと共にシューレースの締め加減によってフィット感を調整するやり方が好ましいのではないでしょうか?今回のキャンバススニーカーのフィッティングの為には大袈裟かもしれませんが、ブラノックディバイスと呼ばれる計測器を用いて適正なサイズ選びの参考にしていただく事をお勧めします。お客様ご自身の好みのフィット感もあると思いますので、あくまでも参考にしてください。
そして弊社のオフィシャルサイトのブログでも書かせていただいたバルカナイズド製法によって圧着されたゴム部分の剥がれに関しては、2018年に発売されたシューグー®アロンアルファ®での接着によって一定の効果がある事は確認済です。大事に履かれているスニーカーをご自身でメンテナンスするということも、より愛着を持ってスニーカーに接していただける行為だと考えます。汚れたら洗う、ゴムが剥がれたら接着する。是非お試しください。
2022年5月
Port gallery Kobe
草野健一
1969年熊本生まれ。ビームス プラスのディレクターを務めたのち、2012年より自身のブランド「KENNETH FIELD™(ケネス フィールド)」を始動。「For NEW TRADITIONALIST」をコンセプトに、アメリカントラディショナルを多角的にアップデートしたアイテムを提案する。2014年まで「バラクータ ブルーレーベル」のデザインを担当。2014年には「ルウオモヴォーグ」と「 GQイタリア」が主催する新人デザイナー「THE LATEST FASHION BUZZ」に選出される。
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