そんなヘリクツでもって己の惰性を正当化しようとする私にとって、この Russell Moccasin の Knock-A-Bout との出会いは衝撃的だった。店員に勧められるがまま履いたのだが、足を入れた途端グッと吸い込まれていくような感覚は、それまでにまるで経験したことのないものだった。また、甲の周りを優しく吸い付くようなその心地よさは、雨の日のゴム長とも全く違った。ハイカットのブーツなのに着脱しやすく、とにかくラクチンで快適。何事にも優柔不断な自分が即決で購入した数少ないアイテムである。
それから本当に長いこと履かせてもらっている。思えばレザーの手入れ等、このブーツを通して学んでいった節がある。革モノに対してよく「育てる」という表現を目にするけれど、こいつは自分にとっての育成選手第一号であろう。ブラシは馬か豚かとか、やれクリームはどうとか・・・ラクチンだと思って購入したはずが、自ずと積極的に手間をかけることになっていたのである。
レザーというモノの持つ堅牢さ、しなやかさ、その一方で垣間見える繊細さ、脆弱性など、その全ての魅力をダイレクトに体感できるのが、このブーツの凄みであろう。これからもまた新たな変化を楽しみに、程よく手をかけていきたい。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。