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映画のワンシーンのように履きたいブーツRussell Moccasin Knock-A-Bout に夢中なのは、別にラクチンだからってわけじゃない

「 loafer 」の語源が “怠け者” っていう通り、基本ものぐさな自分はスリッポン的な靴を選びがちである。紐靴の限界は6アイレット程度かもしれない(笑) 英国の SKINS 写真集を読んでビビっときたドクターマーチンも、定番の8ホールを買ったらたちまち玄関のオブジェと化してしまった。だって買い物に出かけるとして、試着のことを考えるとやっぱりブーツなんて気後れしてしまうでしょう? 居酒屋のお座敷なんかも面倒で仕方がないよね。そもそもの話、文明開化から100年以上が経ち、『 TAKE IVY 』から50年、『 Made in USA Catalog 』から40年が過ぎ去ろうとも、日本人というのはいまだに玄関で靴を脱いでいるわけだ。アメリカ文化に根ざしたブーツというモノが如何に魅力的であろうと、根本的には日本人の生活スタイルとはマッチしないのではないだろうか。
そんなヘリクツでもって己の惰性を正当化しようとする私にとって、この Russell Moccasin の Knock-A-Bout との出会いは衝撃的だった。店員に勧められるがまま履いたのだが、足を入れた途端グッと吸い込まれていくような感覚は、それまでにまるで経験したことのないものだった。また、甲の周りを優しく吸い付くようなその心地よさは、雨の日のゴム長とも全く違った。ハイカットのブーツなのに着脱しやすく、とにかくラクチンで快適。何事にも優柔不断な自分が即決で購入した数少ないアイテムである。
それから本当に長いこと履かせてもらっている。思えばレザーの手入れ等、このブーツを通して学んでいった節がある。革モノに対してよく「育てる」という表現を目にするけれど、こいつは自分にとっての育成選手第一号であろう。ブラシは馬か豚かとか、やれクリームはどうとか・・・ラクチンだと思って購入したはずが、自ずと積極的に手間をかけることになっていたのである。
レザーというモノの持つ堅牢さ、しなやかさ、その一方で垣間見える繊細さ、脆弱性など、その全ての魅力をダイレクトに体感できるのが、このブーツの凄みであろう。これからもまた新たな変化を楽しみに、程よく手をかけていきたい。