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映画のワンシーンのように履きたいブーツロングブーツでひとり『ミッドナイト・イン・パリ』

綿100%のジーンズですら履きにくいと敬遠されるほど、イージーさが重要となる昨今のメンズファッション。いわゆる様式美なんてえのは、もはや死語なのかもしれません。そんな現代においても、ダントツの絶滅危惧候補といえるのがロングブーツ。それも比較的ポピュラーなエンジニア系ではなく、脱ぎ履きのしにくい乗馬系・・・いわゆるライディングブーツでございます。そもそも流行った試しもないんですけど、ちょっと前までは「タニノクリスチー」と「ジャコメッティ」という2社が頑張っており、ほしいと思えば手に入れられたんです。しかし前者は廃業、後者もディスコンにしてしまったので、今やオーダー以外でこの手のブーツを手にいれることは、極めて困難になってしまいました。さあ困った。ロング丈のコートにこの手のブーツを合わせるようなコーディネートは、もはやメンズファッション誌ではできないのですから。「パラブーツ」あたりが丈の長いブーツをつくってるって? いや、あれはワークブーツ系だからまったく意味合いが違うんですよね。
とまあ今さら嘆いてもしょうがないので、これからはそういった着こなしは、自分ひとりで楽しむしかなさそうです。私が持っているとっておきの一足は、「グッチ」が2011年に発表した『1921コレクション』という限定ライン。エレガントなフォルムやイルチアっぽい上質なカーフに加え、たまらないのはサイドにもバックにもジップがついていないという潔さ。それゆえにめちゃくちゃ格好いいのですが、そりゃ履く人を選ぶわな。
このブーツにコーデュロイのジョッパーパンツのすそをインして、「アルニス」のイエローっぽいツイードのロングコートをガバッと羽織り、トドメに別珍のハンチング帽・・・。そんな時代錯誤な出で立ちで真冬のパリの夜をひとり歩きするときは、僕にも『ミッドナイト・イン・パリ』現象が起きるような気がして、ちょっとドキドキしてしまうのです。そういう楽しみは、もうファッションには求められてないのかな?