世の中の人が当たり前にしていることもできない自分に落ち込むとともに、ネクタイを締めずにすむ仕事をしようと固く心に誓ったものでした。見事にその願いは叶い、現在はフリーの雑誌編集という、明日をも知れぬ浮草ライフを満喫中。ネクタイを「締めなくてはいけない」日なんて、年に数回あるかないかです。
というわけで毎日締めている人には申し訳ないのですが、私にとってのネクタイとは、ちょっとお洒落したいときに使う、スカーフのようなもの。だからきっちり締めなくても、ディンブルが歪んでもノープロブレム。むしろそういったラフなもののほうが気に入っています。そんな私の目下の溺愛品が「jupe-by-jackie(ジュップ・バイ・ジャッキー)」という、オランダ人女性がデザインしたもの。大きなドットやストライプなどの洒落たデザインもさることながら、すべての柄がインド人職人の手刺繍によって仕上げられた、温もりあふれるネクタイです。
イタリアやフランスの名品と較べるとつくりが少々いびつだし、そもそもきっちり締められません。でもそこが、偉そうじゃなくていいんです。これはステイタスを主張するためじゃなく、自分らしくいるためのネクタイなんですから。
この春、とある経歴詐称コメンテーターが話題になりましたが、彼のこんもり盛り上がったぴかぴかのソリッドタイをテレビや雑誌で見るにつけ、私はほっと安心するのです。彼にこのネクタイを1本プレゼントしたいなあ……。ステイタスとは無縁ですが、虚勢を張らずに生きられる人生に乾杯!
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。