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自分らしくあるためのネクタイ60年代・Washington Tremlett社製のワイドタイ

デヴィッド・ホックニーを最初に知った中学生の時、実は彼の作品よりルックスに心を奪われていた。オックスフォード・バッグスに RUGBY by Ralph Lauren を混ぜ合わせた様なあの独特の世界観、そこにルールがあるような無い様な・・・。
そこで、未だ世のクリエイターにイマジネイションを与え続ける彼の極太のパーソナリティーについて少し調べてみることにした。生まれは1937年イギリス・ブラットフォード。イギリス人なんですね。美大を出た彼の人生を決定づけた出来事が2つ。
1つ目は63年、N.Y でのウォーホルとの出会い。ファクトリー開設の1年前という噴火直前の火山の様な時期。きっとここで26歳のホックニーはアーティスト自身が作品並みにアイコン化する必要性をウォーホルから学び取ったに違いない。
2つ目は64年にカリフォルニア⇔ N.Y の長旅を友人のオジークラークと行ったこと。オジーといえば60年代スウィンギングロンドンのシーンを築いた伝説のデザイナーであり、この旅の翌年、ロンドンのストリートはオジー旋風が吹き荒れる。ホックニーはと言うと、えらくL.Aが気に入ってしまい、ここでアトリエを構えアクリル絵の具によるプールシリーズを生み出すこととなる。
仮に人格が30歳で完成するとするならば、最後の仕上げにウォホールとオジーの洗礼を浴びた事となる。N.Y のウォーホルからはアメリカントラッドを、ロンドンのオジーからはスウィングするストリート感覚を、そしてホックニーは太陽光溢れるLAから濁りの無い原色を得た訳だ。この3要素が複雑に絡み合うとホックニースタイルが完成する。
さて、今回のお題のネクタイだが、写真の物は自分が年末のパーティー時期にホックニーコスプレをする際、必ず身に付けるお気に入りで60年代 Washington Tremlett 社製の超ワイド幅な一品。このメーカーは現在のネクタイの原型を作ったともいわれフランクシナトラや映画マイフェアレディーの衣装等も手がけた老舗だが今はもう無い。それにしてもこの柄、この色このフォルム、時代のあだ花とも取れるほどの存在感である。そもそもホックニーコスプレなどと言っても大概の日本人は丸眼鏡の段階でほぼゲームオーバーとなる。コルビジェめがね然り、罰ゲーム感という巨大な壁を越えてようやくこのネクタイに辿り着く。ポップアイコンへの道は長く険しい・・・。