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STORY

復活!? 「ジェントリーフレアー」のスーツ ~ 2018年 注目のアイテム

この6年くらいかけて、どんどん大きくなっていった僕の洋服のシルエット。もはや中毒状態でコートはくるぶし丈、パンツのすそ幅は25cmが当たり前。しまいにはデヴィッド・バーンばりのビッグショルダーにまで手を出し、臨界点にまでたどり着いてしまった。ふと周囲を見回すと、コモリのタイロッケンやオーラリーのステンカラーが、この界隈におけるスタンダードになっている。そろそろベクトルを別の方向に向けるべきときなのかもしれない・・・。

そんな思いを抱いた7月ころに注文した「テーラーケイド」のスーツが、ついに納品された。
以前ご紹介したレイト70’s風コーデュロイスーツのコンセプトをさらに進化させた、ツイード製のスリーピースだ。

巷の「わかりやすい」IVYスタイルとは一線を画す、こだわりが満載!

生地はヘヴィーなハリスツイード。襟はより大きく。ナチュラルショルダーであるものの、幅広めで着るとややコンケープして見える肩。約9ミリ位置に配したコバステッチ。でもって最大の見所ともいえるパンツは、ひざ幅からすそ幅まで一直線に落ちる22.5cm。はいてみると生地の重量感と相まって微妙にすそが広がって見える、俗にいう「ジェントリーフレア」(死語)である。往年のファーラーのホップサックパンツに近いかもしれない。着用したイメージだが、『トッツィー』『クレイマー・クレイマー』あたりのダスティン・ホフマンや、『君は薔薇より美しい』時代の布施明を思い出していただきたい!

そでボタンは3つ。

ひざからすそまでビシッと一直線のシルエット。

彼らのようにロングヘアー&ビッグシェイプのティアドロップなんかが最もハマる1着ではあるが、坊主頭の僕が着る場合はベレー帽にタート・オプティカルのサングラス、ビットローファーあたりがちょうどよさそうだ。いっそのことタイドアップしたレギュラーカラーシャツ&ヒール高めのコンビシューズでギンギンにキメた〝70’S解釈の30’Sスタイル〟という線も、『スティング』を彷彿とさせて捨てがたい。そんな話でテーラーの山本さんと盛り上がっていたのだが、同席していた香港のセレクトショップオーナー、マーク・チョウ氏はドン引きしていた。・・・まあ、このくらい「わかりにくい」ほうが、長年着られるってものなのだ。
Eisuke Yamashita

Fashion Editor山下 英介

1976年埼玉県生まれ。大学卒業後いくつかの出版社勤務を経て、2008年からフリーエディターとして活動。創刊時からファッションディレクターとして携わった「MEN’S Precious(小学館)」を、2020年をもって退任。現在は創刊100周年を迎えた月刊誌『文藝春秋』のファッションページを手がけるとともに、2022年1月にWebマガジン『ぼくのおじさん/MON ONCLE(http://www.mononcle.jp)」を創刊、新しいメディアのあり方を模索中。住まいは築50年のマンション、出没地域は神保町や浅草、谷根千。古いものが大好きで、ファッションにおいてもビスポークテーラリング、トラッド、モード、アメリカンカジュアル……。背景にクラシックな文化を感じさせるものなら、なんにでも飛びついてしまうのが悪いくせ。趣味の街歩きをさらに充実させるべく、近年は『ライカM』を入手、旅先での写真撮影に夢中。まだ世界に残された、知られざる名品やファッション文化を伝えるのが夢。