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STORY

「カセドラル」のビスポークレザー

最近、東京の洋服好きの間で密かな話題を集めているセレクトショップ「カセドラル」。ストリート、モード、伝統工芸、サルトリアといった様々なファッション要素における一番出汁を抽出し、さらに煮詰めたかのようなその濃厚なセンスは、あまりにいろいろなものを見すぎて半ばファッションEDになりつつあった小生の愚息もあえなく昇天・・・というほど刺激的。

山内」という全く聞いたことのない名古屋のブランドのセットアップ、ヨージのパンツ、オーラリーのシャツ、濱野太郎さんが手織りしたストール、エンツォ・ボナフェの靴・・・。なんて感じで、まったく脈絡がないようでいて、そこにはしっかり腑に落ちる意味がある。ここのオーナーさんの「売れるものじゃなくて、売りたいものを仕入れる」というポリシーには、僕も大いに感銘を受けたものだ。

そんな「カセドラル」で僕が絶対におすすめしたいのが、レザーウエアのビスポークである。そもそもレザーって高価だしやり直しがきかないものだから、せいぜい1モデルをサイズオーダーできる程度のものなのだが、ここの場合ショップが共鳴してくれば、なんでもつくれる。しかも使える革のレベルがメゾンブランド級。さらにここだけの話、値段もけっこう安いのだ・・・!

とくれば僕がオーダーしない理由はない。ショップで一目惚れした通称「ロイヤルスエード」というカーフスエードを裏地を貼らずに仕立て、ゆったりしたシルエットの春用ロングコートをつくってもらうことにした。


果たして1回の仮縫いを経てあがってきた完成品がこちら。一目瞭然、レザーのクオリティが抜群なのだが、とはいえ決して嫌味じゃなくて、Tシャツの上にガバッと羽織れるような軽快なムードに仕上がっている。今までスエード製のアウターはいくつも買ってきたが、これほど満足いく一着に出合ったのは初めてだ。こりゃすごい!


次回は同じ革でジャケットをつくってもらおうか? いやいや、セント・ジェームスみたいなプルオーバーなんてのも、面白いかもしれない。いやいっそのこと、クロコダイルでベストをつくるのはどうだろう・・・? なんて具合に、早くも次回作の構想を練っている。
Eisuke Yamashita

Fashion Editor山下 英介

1976年埼玉県生まれ。大学卒業後いくつかの出版社勤務を経て、2008年からフリーエディターとして活動。創刊時からファッションディレクターとして携わった「MEN’S Precious(小学館)」を、2020年をもって退任。現在は創刊100周年を迎えた月刊誌『文藝春秋』のファッションページを手がけるとともに、2022年1月にWebマガジン『ぼくのおじさん/MON ONCLE(http://www.mononcle.jp)」を創刊、新しいメディアのあり方を模索中。住まいは築50年のマンション、出没地域は神保町や浅草、谷根千。古いものが大好きで、ファッションにおいてもビスポークテーラリング、トラッド、モード、アメリカンカジュアル……。背景にクラシックな文化を感じさせるものなら、なんにでも飛びついてしまうのが悪いくせ。趣味の街歩きをさらに充実させるべく、近年は『ライカM』を入手、旅先での写真撮影に夢中。まだ世界に残された、知られざる名品やファッション文化を伝えるのが夢。