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本当は教えたくない!?味わいのある弁当おなかのなかから楽しくなれる 「すみや」のお弁当

「空腹は最高の調味料」という言葉がある。何かしらの示唆に富んだ深い言葉のような気にさせられるけれども、何だか身も蓋もない感じがする。いざ時代が違えば、時の権力者が飢えた民衆をなだめるための体のいい文言だったりしたんじゃなかろうか。仕事のストレスで口寂しくなり、つい何かしらつまんでしまう我々現代人にとっては、やはり現実的な調味料のアンバイこそが求められるのだ。
昨年末に発行されたレシピ本、『基本調味料だけで作る 毎日の献立とおかず』は、最低限の調味料を使いこなして日々のごはんを美味しくできる良書である。こちらの著者の角田真秀さんは、夫の和彦さんと共に「すみや」というお料理ユニットを組んでおり、ケータリングや数々のイベント出店で大活躍中である。この私も「すみや」の数年来のファンであり、折にふれてはその味に舌鼓を打ってきた。シンプルな味付けながらも旬の素材を生かしたその料理は、口に運ぶ度に四季折々の美味しさに気づかせられる。
さて今回いただいたのが「あおぞら弁当」。ルミネ立川で催された「あおぞらガーデン」というイベントにて、一日限定30食で販売されたものだ。
ルミネの屋上でのイベントで、快晴だったこともあり初夏のような暑さだった。暑さに弱い私はこういう状況では一気に食欲をなくしてしまうのだが、今回の「あおぞら弁当」はその逆境をものともせず、あっという間に私の胃袋へと吸い込まれていった。この弁当はいわゆるタコライスをもとにしたもので、ホットな環境を予め想定したものであろう。フレッシュなレタスのシャキシャキ感と旨味ある肉味噌が絶妙で、きっと如何なる炎天下でもお箸が止まらないはず。また、適量のアボカドとチーズがちりばめられており、これがただ単にあっさりだけでない腹持ちの良さを生み出している。
唐突ではあるが、かつてVAN JACKETの石津謙介先生が提唱したのが衣服の「TPO」。衣服選びは Time(時)・Place(場所)・Occasion(場合)を考慮せよという事だが、あえて自分たちの店を持たずにケータリングを主としている「すみや」の料理は、まさに「TPO」を心得ていると言えるだろう。その味付けのさじ加減から生み出される季節感や特別感は、ただ空腹を満たすだけでなく、心から満足できるものだ。そんな「すみや」のモットーは、“おなかのなかから楽しくなれる” とのこと。