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本当は教えたくない!?味わいのある弁当あしたのための弁当

学生の頃の弁当の記憶をここ最近ずーっと思い返しているのだが、一向に絵が浮かんでこない。70〜80年代にはデコ弁やキャラ弁、嫌がらせ弁当の様なインパクトのあるカルチャーなど全くなかったし、当然写メも SNS もない中で、ようやく思い出せたのが当時アメリカから上陸したてのタッパウェアだ。あの洗濯板のようなフタのデザインとサイドのプリントモチーフが、実にミッドセンチュリーだったなぁ・・とまあ、こんなもんで精一杯。それと、プラスチック製品として色出しが独特で我が家はなぜかモスグリーンで統一。あまりおいしそうに見えないなーと子供ながらに疑問が少々。作り続けてくれた親には申し訳ない限りだ。
ただ、当時夢中になって見ていた TV マンガのあの弁当エピソードだけは忘れられない。それは・・・
『丹下段平のアンパン』
あしたのジョー1st シリーズ第3話 けものよ牙をむけ。ここで登場する。酒に溺れる元ボクサー丹下段平は酒場で喧嘩している矢吹ジョーと遭遇、一瞬で才能を見いだした。段平は、ジョーを世界チャンプにするべく不眠不休で肉体労働に明け暮れる。丹下ジム設立資金のためだ。
ここで登場する段平の1日1食、唯一の弁当、それがたった1個のアンパンなのだ。労働者仲間からは死んじまうぜ!と忠告されるが段平の耳には入らない。自暴自棄から求められる存在へ。夢とともに噛み締めるひと口ひと口はさぞ美味かったろう。いい大人になってみると、弁当ってあくまで時間やお店も無い様な時の非常手段か子供の行事の時くらいのアイテムになりがちだ。とりあえず食欲を満たすだけ・・みたいなね。
出張中の移動車内で頂くご当地弁当なんていうのもあるけど、そこそこ食べ尽すと個々の食材の風味2割、共通のお弁当味8割であることに気付いてしまう。なかなか段平レベルの1食にはありつけない。少しでも近づく為には、頂くシチュエーションと取り巻くエピソードを別途自ら設定しなければ!そんな気さえする。
かく言う自分も1985年、文化服装学院デザイン科を受験した試験日当日、親の申し出を断って、持って行った弁当はアンパン1こだった。実家から巣立ちたくてウズウズしているひな鳥にとっての夢を叶える願掛け弁当は段平の魂に肖ってさりげなく自分で準備した。なので、いまでも尾藤イサオのウエットなシャウトを聞く度に背筋がピンと伸びてしまうのだ。