さて、『暮しの手帖』での服飾記事といえば “直線裁ちの服” であるが、その他に繰り返し紹介されるものとして、ベレー帽が挙げられる。古くは1949年発行の「第一世紀第3号」(創刊三号)での記事「ベレのかぶり方」。日本人は頭が大きいから帽子が似合わないとしつつ、「その中では、ベレのようにつばのない型は、日本人によく似合う」という言葉で推奨している。「第一世紀87号」(1966年)では、「和服にでもけっこうかぶれる」という志賀直哉や、「流行の言葉でいえば、TPO の見本である」とその変幻自在な形を評価する山本嘉次郎ら、粋人たちのコメントとコーディネートを挙げての特集。その他、作成方法の記事「だれにでもかんたんに作れるしゃれたベレー」(1964年)など、『暮しの手帖』では一貫した “ベレー推し” だ。
特に魅かれてしまったのが、1976年「第二世紀44号」における特集「ベレーのすすめ パリの町角に立って」である。パリ在住の増井和子さんによるレポートで、いわゆるファッションスナップ集。そこには老若男女、パリの様々なスタイルにとけ込んだベレー帽の姿が。「ベレーは、なぜかあなたを若く見せます、ときに粋にみせるし、可愛くみせるし、知的にみせるし、ほんとに、ふしぎな帽子ですね」
実は私、この記事に感化されて昨年の秋にベレーを購入。「軍人さんですか?」「画家ですか?」と本気で尋ねられたりしつつもちょくちょく試している。フェルト生地がちょっと暑いので夏のあいだは控えていたが、間もなくまた出番がやってくる。肌寒い季節のコーディネートに馴染んだり、或いは上手くハズしてくれたり・・・日々の “暮し” のなかで、ベレーを自然に取り入れることができるなら、どんなに便利で素敵だろうと思う。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
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90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。