総手縫いのビスポークスーツとはまた違った意味で、洋服の夢をもっとも表現している存在が、エルメスのプレタポルテだと思います。だれもが着られるデザインでありシルエットなのに、どこかにファンタジックな仕掛けが施されているから、そでを通すのが楽しくなってくるんですよね。と同時にロンドンのマスキュリンさやイタリアのエロティシズムとも異なる、そのとらえどころのない軽やかなテイストを、ライターなのにどう表現するべきかわからない自分がイヤになってしまいます。しかたない、とりあえず「エスプリ」って言っとけ（ライターあるある）！
もちろん世の中におけるいわゆる高級品の、さらに3倍を目安とする（笑）エルメスプライスゆえ、そう購入できる機会は多くありませんが、今までシャツやパンツといったベーシックなものから、オールインワンといった変わり種まで、ちょっとずつ手に入れてきました。ジャケットやアウターまではさすがに手が出ませんが・・・。今まで1着も手放していないから、決して悪い買い物ではなかったと思います。
そんなエルメスの最新作でグッときてしまったのが、こちらのシャツ。ボタンフロントのハイネックというちょっと面白いデザインで、ジャケットの下に着ると面白い表情が醸し出せます。ちょっとくすんだレッドカラーも、派手すぎなくてすばらしい。今季のエルメスは写真のブロード生地の色バリエーションから起毛素材まで、このデザインをいろいろと展開しているのですが、ブロードにシルクスクリーンプリントを施した、まるでスカーフのようなコットン生地のものは、なかでも極め付け。ビスポークスーツ1着分に迫るプライスだったのでさすがに諦めましたが・・・。こんな素敵なシャツを着ている人がいたら、ぜひ会ってみたいものです。故・加藤和彦さんのような、素敵なダンディであってほしいなあ。