それが中学生になると、材質がどうのこうのといっちょ前に語り始める。「ハーネス」(笑)の青いのはどうたら~なんて、体育の着替えの時に話していたものだ。吉田栄作が白T シャツで『心の旅』を歌っていたのもこの頃かな。雑誌なんかでも白T にジーンズのコーディネートをよく見かけたと思う。そういった流行と子供でも手の届く価格帯という条件がマッチしたことで、“ T シャツ” は自分が服選びに目覚めるきっかけの一つとなった。
大学生になりひとり暮らしを始めてからも使い続けた3枚組Hanes。柔らかい肌触りがよくて、選ぶのは専ら赤パック。3枚を順番に使うのではなく、2枚は普段の下着として使い、もう1枚はアウターとして用いるための “とっておき” としてきれいな状態で保存した。また、“パソコンの普及”という大革命が起こると、モノ好きの自分はプリンタとスキャナも買い揃え、オリジナルのプリント T シャツを作った。この時も初めは Hanes で試したが、生地的に試行錯誤して、最後には厚めの FRUIT OF THE LOOM で落ち着いた。作ったのはくだらないバンドT シャツばっかりで、その全ては部屋着として消えていったのだった。
こんな感じで長年の付き合いである “パック T ”。現在愛用しているのは、ヘインズジャパンによる Polo Ralph Lauren のライセンスもの。完全にインナーとしての用途である。現在 “パック T ” に対して心がけている事は、適切に「見切りをつける」事。着る度にガシガシ洗って、よれよれになれば速やかにお暇に出す。世間ではよれたTシャツがかっこいい場合もあると思うが、自分はジェームス・ディーンでもなければ白洲次郎でもないので、あまり夢を見ないようにしている。大量消費時代の反動として「いいものを長く使う」という傾向があるけれども、“パックT ” はきちんと消費すべき「日用品」で間違いないと思う。それは低価格で流行をつまみ食いするためのファストファッションとは似て非なるものであり、毎日の生活の土台となるものだ。見るからに工場で “大量生産された” って感じのピカピカのパックを開封する度に、これからも日々しっかりと労働し、この暮らしを維持していこうという気概を持つのである。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。