山本耀司は旅人だと思う。ザンダーの写真に出てくるジプシーの服は、どれだけの距離や時間、あてもない道を歩けばこの服に辿り着けるのか?という表情をしている。2011年にはブランドのパリデビュー30周年を記念して渋谷西武のギャラリーでYOHJI YAMAMOTOのアーカイブを展示していたので、さっそく観に行った僕はやっぱり感激して、そのまま階下へ降りて、西武のショップで10年ぶりにYOHJI YAMAMOTOの服を買った。赤いストライプが入った黒いウールヘリンボーン素材をたっぷりと使ったパンツは、表面を一度コーティングしたあとに、わざわざ洗いとブラシをかけて毛羽立たせてあった。何千マイルも歩き通した旅人が、さっきまで穿いていたような服だった。30歳を過ぎて、昔に比べたら少しは似合うようになっていたが、まだまだ道程は長い。60歳になればもう少し似合うだろうか?僕もまた、旅の途中だ。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。