僕は気軽に夏のファッションアイテムとして使ってしまっているけれど、このかごバッグというやつは、つくるのに極めて手間のかかるシロモノらしい。材料になる山葡萄のツルやくるみの木の樹皮などが自生しているのは、長野や東北の人里離れた熊が出るような山の中。こいつを命がけで採取した後は、2〜3年乾燥させて、ようやく編み始めることができるという。細かく編んでいるやつは2〜30万円くらいするけれど、それでも全然安いよね!? 実は件の「カバ」も、創業者が日本を旅した際に見つけたかごバッグが着想の源になっているとかいないとか・・・。
ちなみにテーラー「羊屋」のオーナーであり、私の尊敬する数寄者である西口太志さんが持っているぶどうのツル製のかごバッグは、なんと横幅60cmという超ビッグサイズ! 僕の生活においては大きすぎるけれど、そのド迫力にやられて僕もオーダーすることにした。完成の際はぜひ紹介させてほしい。
1976年埼玉県生まれ。大学卒業後いくつかの出版社勤務を経て、2008年からフリーエディターとして活動。創刊時からファッションディレクターとして携わった「MEN’S Precious(小学館)」を、2020年をもって退任。現在は創刊100周年を迎えた月刊誌『文藝春秋』のファッションページを手がけるとともに、2022年1月にWebマガジン『ぼくのおじさん/MON ONCLE(http://www.mononcle.jp)」を創刊、新しいメディアのあり方を模索中。住まいは築50年のマンション、出没地域は神保町や浅草、谷根千。古いものが大好きで、ファッションにおいてもビスポークテーラリング、トラッド、モード、アメリカンカジュアル……。背景にクラシックな文化を感じさせるものなら、なんにでも飛びついてしまうのが悪いくせ。趣味の街歩きをさらに充実させるべく、近年は『ライカM』を入手、旅先での写真撮影に夢中。まだ世界に残された、知られざる名品やファッション文化を伝えるのが夢。
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