Fit in Passport に登録することで、あなたにフィットした情報や、Fit in Passport 会員限定のお得な情報をお届けします。

ページトップへ

STORY

Bon VieuxとNEJI、大阪へ行く

以前にもこのコラムで紹介したビスポークテーラーの大島崇照(たかあき)氏が、この3月で某社との契約期間を満了、2024年4月に独立し大阪・北浜に自身のアトリエ兼オーダーサロンを開業した。これまでは自身の名前を冠していた屋号も「Scholte(ショルテ)」と改名、ますます精力的に活動していくことになる。実はこの「Scholte」という屋号、3年ほど前に氏からの依頼を受けて僕が名付けたものだ。嵩照氏の趣味や好み、仕事に対する矜持などを細かく取材しながら、語感・語呂のリクエストをあれこれと聞き出すためにLINEでやり取りすること数10往復。僕から提示した20種類ほどの名前の中から最終的に2つに絞り、「Scholte」を選んで貰えたときは嬉しかった。その半年後に崇照氏の仕立てでスーツをビスポークした際、僕の好みやフィッティング、ディテールのあれこれについて尋ねてくれる氏を前にして「あ、なんだか半年前と立場が逆転したようで面白いな」と感じたことを覚えている。ジャケットにしても屋号にしても、何かを「あつらえる」ためにはまずお互いのことを知らなければならず、そのためにはビー・スポーク(bespoke)、採寸以上に綿密なコミュニケーションが必要とされるのだ。


と、前置きが長くなったが、ビスポークテーラー「Scholte(ショルテ)」の開業を記念して、崇照氏の弟であるBon Vieux・大島拓身氏が大阪にてポップアップストアを開催することになった。関西方面の顧客様に対して「Scholte」のオーダー会(アポイント要)をアテンドしつつ、Bon Vieuxの商品を見て頂こう(アポイント不要)というもの。会場に並ぶのはBon Vieuxで取り扱う古着やF.lli Giacomettiのシューズ類に加えて、Bon Vieuxのオリジナルアイテムなどを予定している。崇照氏とは前置きのような所縁(ゆかり)もあることだし、せっかくならばと「Scholte」の開業祝いを兼ねて鶴田もこのポップアップに同行することにした。

僕のブランドDEAD KENNEDYS CLOTHING(以下、DKC)は現時点で販売できるアイテムも無いし、単純に「Scholte」と「Bon Vieux」のお手伝いをしに行くつもりで呑気に構えていたところ、生産をお願いしているメーカー様から「シャツが納品されます」と連絡があった。あら、間に合っちゃうの?大阪。ということで、DKCのコレクションからは最もオーセンティックなレギュラーカラーシャツ「DK01 Gentlemen’s Agreement Destruction」の新作を持っていくことにした。前回の秋冬に作ったアイテムは僕の手元に殆んど残っていなかったので、届いた荷物を開梱した瞬間は「久しぶりだなDKC!」という感じがして、自分自身のテンションも大いに上がったのだ。テンションが上がったついでにルック撮影を敢行することにした。





Bon Vieuxで取り扱う古着やF.lli Giacomettiのシューズ類、Bon Vieuxのオリジナルアイテム、DEAD KENNEDYS CLOTHING DK01の新作を絡めたスタイリング。「シャツが入荷した当日に『DKCが間に合ったんでルックでも撮っちゃいますか』と大島(弟)氏に相談し、その2日後には撮影」という突貫スケジュールだったためモデルの手配がさすがに間に合わず、本人たちが主演している点はどうぞご容赦ください。(なんとかギリギリで、大髭の岸さんに共演してもらえました)




ちなみに、僕が崇照氏のために考えた「Scholte(ショルテ)」という名前は「既成の意味を成さない、造語にしたい」という氏の要望に応えたもの。幾つかの候補を考えた末に、アナグラム(単語や文の文字を並び替えて別の意味を持つ言葉)式で「Clothes(服)」という単語を解体して組み換えたものを提案させてもらった。サヴィルロウで修業したのち、ミラノの伝説的なサルトであるティンダロ・デ・ルカ氏(2018年に逝去)に教えを受けた崇照氏の仕立てからは超・本格的でありながらも自由で柔軟な気風を感じられる。顧客の注文に対してフレキシブルに対応する氏の仕事ぶりを受けて「洋服(Clothes)そのものの古き慣習やスタイルに囚われ過ぎない」という意味を込めた屋号が「clothes」のアナグラム=「Scholte」だ。貫禄や威厳を感じさせる既存の言葉ではなく、むしろ自由な造語を望んだという点からも崇照氏の仕事に対する矜持が感じられるし、その柔軟さを下支えするのは圧倒的な技術力であるはずだ。確固たる軸足があるからこそ、変化球の要望にも柔軟に対応できる。僕よりも5つ年上の崇照氏から学ぶべきことは全ての洋服屋にとって大いにあると思うし、Bon VieuxもNEJIも洋服屋としてそうありたいものだ。

ということで、2024年4月26日(金)~27日(土)の2日間は大阪にて皆様とお会いできることを楽しみにしています。


「Scholte Trunk Show」大島崇照氏によるビスポークオーダー会(要アポイント・Bon VieuxインスタグラムのDMまで)
「Bon Vieux×NEJI Pop-up Store」高円寺の古着屋Bon VieuxとNEJIによるポップアップストア(アポイント不要)
会場:大阪市中央区北浜東1-17 北浜東野村ビル4階 北号室
日時:4/26(金)13:00-19:00・4/27(土)11:00-16:00

Satoshi Tsuruta

NEJI Organizer鶴田 啓

1978年生まれ。熊本県出身。10歳の頃に初めて買ったLevi'sをきっかけにしてファッションに興味を持ち始める。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻に興味を持てず、アルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを本格的に決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆などを16年間にわたり手がける。2021年、22年間勤めたビームスを退社。2023年フリーランスとして独立、企画室「NEJI」の主宰として執筆や商品企画、スタイリング/ディレクション、コピーライティングなど多岐にわたる活動を続けている。同年、自身によるブランド「DEAD KENNEDYS CLOTHING」を始動。また、クラウドファンディングで展開するファッションプロジェクト「27」ではコンセプトブックのライティングを担当し、森山大道やサラ・ムーンら世界的アーティストの作品にテキストを加えている。