最近、F.LLI Giacomettiのローファーを買った。同社のローファー木型「LUIGINO」を使ったモデルFG257に「UTAH CALF」と呼ばれるグロッシーな型押しフレンチカーフを乗せたアッパー。F.LLI Giacomettiの中で10年続くこのローファー、FG257は僕の周りだけでも「抜群に履きやすい」という人が多く、ある先輩などは同ブランドのオーダー会で、10年履き続けたFG257と全く同じものをリピート注文し、代理店の社長に「せっかく選べる機会なんだから、素材とか変えてみたら?」と勧められても「アッパーを変えて履き心地が変わったらイヤなので、いま履いているものとまったく同じで大丈夫です。同じものが欲しいんです」とストイックを貫いていた。彼にとって、このローファーはスニーカーの様に履きやすく、足に合うらしい。
〈F.LLI GiacomettiのFG257(UTAH CALF)〉僕が一番最近まで履いていたコインローファーはAldenのアンライニング黒コードヴァンだが、そもそも甲が低くて爪先が狭いVANラストは僕の足にはまったく合わない。が、Alden特有の沈み込む中底とライニング無しコードヴァンというグニャグニャアッパーのおかげで、今ではスリッパみたいな履き心地に変化した。Brooks Brothersの特別仕様だった先芯の無いアンライニングローファーに憧れて、1980年代の日本人は普通のAldenの爪先を踏んで芯を潰していたらしいが、僕が履いているAldenはそもそも芯無し/ライニング無しである上に、僕の頑丈な足に10年以上の歳月をかけて慣らされ続けた結果、昆布の佃煮みたいに柔らかくなり爪先もフニャフニャだ。
一方でFG257。Aldenのアンライニングとは逆に、トゥがキリッと立ち上がっているため指先部分にスペースがあり窮屈さを感じない。J.M Westonの180やJohn Lobb ロペスの合わせモカとは異なり、すくい縫いされたモカはAldenと同様だが、手縫いステッチの美しさはアメリカ靴の比じゃないし、全体的にはやはりヨーロピアンなムードが漂っている。
底付けはGUARDOLO A MANO、つまりハンドソーングッドイヤーウェルテッド製法。マシンのグッドイヤーと違い、中底にリブテープを使わない分だけ初めから足馴染みが良い。アッパーのUTAH CALFも弾力があり、軽い。ライニングやインソールも上質だし、下ろして2回目の時点でストレスなく足に馴染んだ履き心地にはちょっと驚かされた。これまでに買ったF.LLI Giacomettiのどのモデルよりも僕の足に合うようだ。初めてF.LLI Giacomettiの靴を買ったのは10年以上前だが、ソールやウェルトも材質が良いらしく、何足も所有しているここの靴はどれもいまだにシャキッとした靴らしい佇まいが残っている。数多の巨大メゾンブランドから下請けで靴作りを任されているファクトリーブランドには、やはり実力があるのか。
って、なんだか今回はモノ自体の話をミョーにしっかり書いてしまった。こういう真面目で当たり前なことはあまり書かないように気をつけていたんだけど。次回からはまた気を引き締めて、いつも通りワケ分かんない話を書こうと思うので、どうぞ見捨てないでください。ちゃんとします。しかし、春ですね。もうすぐ電車の中で、下ろしたてのローファーと新入生を見かけるようになる季節。













