男は部屋に戻るなり LINN のアンプスイッチを入れる。スピーカーからの距離は1,5m。いつもの椅子に座り、拳を握り、床の木目をうるんだ目で追いながら、そうしていることが馬鹿馬鹿しくなるか、ポジティブな思いつきが胸の中に起こるまで、男は音楽に耳を傾け続ける。俺の情けないこの姿をいつも見続けているスピーカーの NINKA、いつも悪いな、今夜もたのむよ。
そしてビリーホリディはいつも正面1mの位置に立って歌い、サムクックは優しく語りかけてくる。そう、音楽はいつでも俺に優しい。決して裏切らない。秘密を持たない。かみさんに秘密なのはこの LINN の価格、それだけだ。スピーカーケーブルのバナナプラグの先っちょの金属のみで1個1,000円。
Amvaiの、ちょうどいい1,000円でした。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。