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まとうべき秋冬ジャケットLEVIS 2nd Gジャンと3rd Gジャンの間に流れる深い河とシトロエンの様なWranglerの話。

今回のお題は『ジャケット』ですが、あえてテーラードを外してGジャンについて書かせていただきます。
いわゆる誰もが連想する G ジャンが登場したのは1930〜40年代でしょうか?カバーオールが鉄道員や炭坑労働者などが愛用したリアルに働く人々用なのに対して、ショート丈のGジャンは馬に乗る職業者、もしくは50年代に流行したデュード・ランチ(牧場疑似体験遊び)用の衣装から端を発したカジュアルウェアと見るのが自然な気がします。ホントに G ジャンってワークウェアのカテゴリーなのかと考えてしまうほど機能が少ないですよね。
実は G ジャンの袖の構造を見ることによって、そのブランドが誰に向けて作っているのかを知る事ができます。ここからはちょっと専門的なお話です。職業の中で腕の振り上げ下げが最も激しいのは何でしょうか?きっとそれはクラシック楽団の指揮者かスペインの闘牛士だと思います。彼らが着るジャケットはある共通点があります。アームホールが限界まで小さいんです。脇の下のすぐ下に袖付けの縫い代があるという意味です。この2つの職業は立ち姿の美しさまで要求されますので、腕を下げた時、最も美しい高めの袖山と腕を上げてもつられて裾が上がらない様な小さなアームホールになっていると言えます。この理屈を G ジャンに置き換えるとどうでしょうか?まずあり得ない程アームホールが小さい歴代モデルとは LEVIS5 06XX (ファースト),507 XX (セカンド) ,Wrangler111MJ (ファースト)この辺りでしょうか?
闘牛士 JK との大きな違いはこの G ジャン達がワークウェア工場で縫われていることです。ワークの工場とは、いかに最小の動作でその工程を終えるかの知恵比べの様な世界です。なのでどうしても袖付けは巻き縫いで1回で終らせたい、となると袖山が高いと巻きにくいので低くする。すると袖が細くなり過ぎて動きづらい、なので2枚袖にして肘あたりを極端に太くする。これで腕が上がり易く肘が曲げ易いリアルなワーク時代のGジャン袖の完成と言えます。製造上の効率と機能、デザインの擦り合わせが常に必要な工場システムなのです。Wrangler111MJ (ファースト)に至っては肘が極端に太すぎてマンボ・パーカッションの衣装の様な袖ですよね。まさに独特の雰囲気です。
そして LEVIS 社は3rd G ジャンから袖の巻き縫いを廃止します。袖山を高くして立ち姿を綺麗に見せるスタイリッシュな方向に舵を切った訳です。インターロック片倒し W ステッチという袖付け仕様にコレ以降はなります。70年代なシルエットでの袖の巻き縫いは事故の元。なので LEVIS でいえば2nd と3rd は全く型紙、原型が違うのです。やっこだこからファッションブルゾンへ進化した訳です。そんな中で異彩を放つのが Wranglerの2nd,11MJZ 。袖山が高いのに袖付けは巻きだわ、ワーク工場で一番嫌がられるゴムの取り付けを6カ所もやらせるわ、さすがベンジャミン・リヒテンシュタイン(ロデオ・ベン)デザイン、デザイナーがやれと言ったらやるのです。昔、所ジョージさんの名言でこんなものがございました。『車を2つに分けるとシトロエンかそれ以外になる。』まさに言い当てて妙な、納得と共に笑いがこみ上げてくる迷言です。この理屈をGジャンに例えるとそのまま50年代製造のラングラー一連のロデオ・ベン・コレクションがシトロエンに相当すると思うんです。歴代Gジャン界の異端児ってな訳です。見た目だけの為に製造現場が嫌な事のすべてが盛り込まれた仕様なのですから。手の届かない奥の方にハイドロ・サスを仕込むデリカシーと同じ感覚です、シトロエンと Wrangler は・・・。