ともかく、14歳の息子が買ってきたトンガリブーツを見て親は爆笑していたが、人生で初めて買ったブーツをWranglerのデニムパンツに合わせた僕は自宅前の公園で3on3をやったりしていた。ウエスタンブーツでバスケ?よく走れたな???という感じだけど。
それから30年近くが経ったこの冬、僕はフランスのシューズブランドSimon Fournierのサイドジップブーツを購入した。ヤバいくらいトンガった爪先と5cm以上あるピッチドヒール。反り返ったロングノーズ靴といえばイタリアのイメージがある人もいると思う。2000年前後巷に異常増殖した偽クラシコなロングノーズ靴は「英国ビスポークのエレガントな爪先を拡大解釈しながらどんどん細く長くしつつ、せっかくだから職人魂詰め込んでコバに太いステッチ入れてみたら、こんなんなっちゃいましたけど」的な田舎っぽい感じだったが、古今東西フランスのシューズデザイナーにあるのは、むしろアメリカへの憧憬のようだ。つまり、ウエスタン。
SartoreやRODOLPHE MENUDIER、Gérard Senéからも感じられたウエスタンの匂い、ハリウッドを経由した古き良きアメリカっぽさ。同じ雰囲気がSimon Fournierからも感じられる。コーディネートはブーツカットなポリ混パンツというアメリカンテイストで合わせながらも、トップスはビスポークのブレザーなど英国アイテム群でカッチリと。
「フランス人が憧れたウエスタン」や「ハリウッドが憧れたサヴィル・ロウ」がごった煮になった日本人。憧れが高じて真似をしてみたが、ちっともその通りになれやしない。誰にでもある、そんな悲しく滑稽で情けない「人間らしい幻想」を捨てたらファッションもモノ作りも終わりだと思う。
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