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異国の物語を秘めたハンカチミドリ色の老婆と1950’S WILLIAM BOYDのバンダナ。

その任務は極めて愉しい時間だったが、一度だけ身の毛もよだつ恐怖を感じたことがある。旧道をひたすら走り、それらしい店構えの建物を発見すると、車を停めて店内に入り発掘作業をする。もう少し走ると美味しいクラムチャウダーのお店がある。まえに先輩に教えてもらったお店だ。腹も減ったしラジオも聴き飽きたし、一気にそのクラムチャウダー屋まで行くつもりだったが「 Antique 」の看板をだしている古い民家を発見した。
先輩と来た時は気が付かなかった民家だ。その土地らしい綺麗な花壇が玄関まわりにあり、大きな花壇ではないが煉瓦で囲いを丁寧に作られ、鮮やかなミドリ色の花だけが多く植えられている。真鍮の呼び鈴が付いた重く大きなドアを開け店内に入ると、なんとなくハズレの予感。綺麗なガラスの花瓶や楽器など、僕が探しているモノとは違う品揃えだ。ジメジメした陰気な店内には、大きな木箱に古いマネキンが無造作に入れられている。マネキン達を左手にみながら奥に進むと、レジには背中の曲がった老婆が一人座っていた。
そのまわりには古いキルトや未完成のキルトが積み上げられており、天井まで壁一面に子供用のガンベルト、カーボーイブーツ、ハットなどが無造作に飾られてられている。いくつか手に取ってみたいモノもあったが、脚立も見当たらないし、声をかけると面倒な気がしたので眺めるだけにした。キルトの山を物色していると玄関を開ける音がしたが、何故か呼び鈴は鳴らない。特に気にもせずキルトを2枚、未完成のキルトを数枚発掘したので、背中の曲がった老婆がいるレジに持っていくと、レジの後ろの棚から額装を引っ張り出している。なんだかブツブツ言っているがよく分からない。またドアを開ける音がした。呼び鈴は鳴らない。開けたのか?閉めたのか?レジの位置からではドアは見えない。また老婆がブツブツ言い始めた。どうやら、これも買いなさいと言っている。額はいらないので中の黄色いバンダナだけ下さい。と言ってその柄をみて少しほっとした。黄色のバンダナには「 ROY ROGERS 」のイラストと文字がハッキリみえた。会計時に老婆の顔を見ると痩せ細った蛙のようだった。このお店を一刻も早く出ないと目蓋に SL76色のミドリがベッタリ塗られた老婆から魔法をかけられ蛙にされると思った。ご存じの方も多いと思うが、アメリカの片田舎にはそんな厚化粧の老婆が普通に現存する。幸い魔法をかけられることもなく会計を済ませ玄関に向かい歩いて行くと、カーボーイブーツを履いたかるく2メートルを超える巨人が「サンキュー」と言いながらドアを開けてくれた。一直線の旧道を走りながらバックミラーを覗いてみると、巨人の横には背筋がピンと伸びた巨人と同じ背丈の老婆が立っていた。

SALUTE LIFE!