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夏ジャケットの裏事情メンズテーラードの夏事情、裏事情。

夏を涼しく過ごす知恵としてテーラードジャケットには背抜きという仕様があります。襟回り、袖ぐり回りは縫い代が集中しているので全て見返しで隠してしまい、その他背中の大部分、前見頃の3分の2を生地1枚にすることで風が抜けて涼しいといったテクニックです。実はこの数年来、イタリアを中心に真冬でも裏地を付けない仕様が流行っています。これには2つの要因があるようです。
1つ目はコンフォートな着心地を目指し、各メゾンはストレッチ性の高い生地を使用する様になった。すると裏地が表の伸びについていけないので冬でも夏仕様の背抜きにしてしまった・・この流れ。2つ目は昨今の体作りブームで、自らの筋肉、骨格を鍛え上げることで美しいジャケットの着姿を自己演出するというナチュラルな考え方。肩パットや大げさな胸増し芯で擬似的なマッチョを作ることは今は NG なのです。
となると、重要になってくるのがジャケットの内側をどう見せるか?となるのです。表からの見た目を美しく整えるため、芸術的手まつりを施したり、まさに曲芸のようなパイピングをしたり。見られることが前提のオープンカーの内装や裏スケルトンのリストウォッチと同じ感覚が要求されます。ここで作り手側の力量が試されます。裏地があれば全て見えなくも出来てしまうところ、構造上必要な作業をこなしながら美意識を持って仕上げるのです。
小学生の頃目覚まし時計を分解して復元できず親から叱られたあの頃の『機械の内側が見てみたい!』こんなテンションでパテック・フィリップの技術者もフェラーリのエンジニアも皆内側の構造美を追求している訳です。たぶんこの感覚、女性には決して理解できないでしょうね・・・。