ご覧のとおり、ハンドルの先端には堂々とウサギの頭部が鎮座。そのリアリティある描写には、狩猟民族の業を感じさせます。そして日本製の傘とは違い極薄のナイロン生地を使っているため、かなりタイトに巻けるのがポイント。きっちり畳むと、見た目にはまるでステッキです。もちろんその持ち方は傘とは異なり、イメージは石原裕次郎がブランデーグラスを扱うがごとく。ヘッドを人差し指と中指の間にはさんで揺らしながら歩けば、遺憾なく紳士の風格が漂うでしょう。
しかし正直いって機能としては微妙なところです。生地が薄いためか日本の土砂降りには歯が立たず、すぐに雨漏りしちゃいますし、普通のハンドルのように湾曲していませんから、どこかに立てかけたり、引っ掛けておくのに一苦労。駅で切符を買うときなんて、パタパタ倒れて恥ずかしいったらありゃしない。「乾燥機能付き洗濯機」みたいなもので、もはや「傘機能つきステッキ」と言ったほうがよいかもしれません。きっと昔の英国紳士たちも「格好つけるための傘」と割り切って、雨は帽子とマックコートでしのぎつつ、きっちりと畳んだままのこいつを持ち歩いたのでしょう。
この傘をトレードマークになるくらいまで使い倒し、周囲の目と自らの羞恥心を徐々に慣らしていって、50代になるころにはクラシックな3ピーススーツにスカルフェイスのステッキを・・・。私の野望はまだ始まったばかりです。
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