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STORY

ハイ&ローカントリー

3月末に熊本へ帰省した。僕の実家は熊本の中心地から60km離れた八代市という街にある。滞在中のある日、在来線と市電を乗り継ぎ熊本市内のシャワー通りにある「Permanent Modern(パーマネントモダン)」を覗いてみた。姉妹店の「Permanent」は少し前に閉店し、レディス「Permanent Modern」内にメンズコーナーが移設された、と聞いていたが相変わらず面白い品揃えでCorgiの膝下まであるケーブル編み折り返し付ロングソックスやオーストリアの作家が作ったリネン×レザー製のバッグ(女性用、10万円)にも牽かれたが、とりあえずパック入りのTシャツを2枚購入した。Fruit of the Loomのタートルネックシャツ、一枚6,800円。'70年代の「High Country」デッドストックで、パッケージのイラストもなかなか素敵だ。


買い物を済ませた後、上通りの某館内にある大手セレクトショップに立ち寄った。以前、東京のビームスに在籍した後輩Sが熊本に移住しそこで働いていると聞いたからだ。両手にハンガーの束を抱えてバックルームから出てきた彼は突然の訪問に随分と驚いた様子だった。そのあと鶴屋百貨店を覗いたところ高校の同級生NとMが二人でポップアップストアの準備をしていた。僕の高校時代、25年前にはHelmut Langやベルギーのデザイナーをいち早く取り扱っていた(現在では随分と違う品揃えらしい)ショップで彼らは今働いている。なんだかんだ、皆が熊本の洋服屋で頑張っていた。


帰京後、パックTを開封してみたら背中の部分を留めるために一本のシルクピンが付いていた。そのピンを見ながら、そういえば10年前に後輩Sが仕事帰りで僕の自宅へ泊まりに来たとき、上着のラペルに刺していたシルクピンを部屋のどこかで紛失し、僕の妻に「危なくてしょーがねーよ!」とブチ切れられたことを思い出し、少し笑った。

僕が生まれたころに作られたタートルネックのTシャツは袋の中で畳まれた位置に沿ってうっすらと日焼けの後があったが、もはや純白でなくてもかまわないと思えた。時が移り、場所が変わっても人生は続いていくのだ。

Satoshi Tsuruta

International Gallery BEAMS Staff鶴田 啓

熊本県出身。1978年生まれ。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻にまったく興味を持てず、飲食店でアルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。新宿・ビームスジャパンのデザイナーズブランドを中心に扱うメンズフロア(当時)に配属となる。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動し現在に至る。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆まで手がける。ワードローブのモットーは「ビスポークのスーツからボロボロのジーンズまで」。趣味は音楽・映画・美術鑑賞、旅行、落語、酒場放浪、料理、服。二児の父。