ここで既製服の出番となるのだが、意外と選択肢が少ないのだ。一般的に現実的な予算(10万円前後)で探した場合、日本で売られているスーツのほとんどは「イギリスディテールのイタリア風仕立て」か「古典的な英国仕立て」のどちらかに大別できる。あとは一部の「アメリカンスタイル」か。
2016年に企画した2つボタンシングルに続いて今年企画したのが、この4つボタンダブルブレストのスーツ。ヒップが隠れる長め(というか普通)の着丈や、レギュラーカラーのシャツに合うようにゴージ位置を下げてラインを下向きに振ったラペル周りは2年前の2Bと同様。大きめの3パッチポケットが印象的。
Buddのシャツ、T&Aのタイ、Henry Maxwellのセミブローグなど英国製アイテムに合わせても遜色ないカッチリ感。
こちらは同じ英国製でもClarksとGlenmacのニットに合わせてみた。裾幅はサイズ46で22.5cmという広めの設定。ドレスシューズにもデザートブーツにも合う。ダブルブレストの割りに上着の前合わせが浅いので、フロントボタンをはずして着ても自然。シャツはもはや裾出し、脱力感。
James LockのキャスケットにデンマークブランドTonsureのフライトジャケットを合わせて、ブリティッシュではないロンドンスタイル。
こちらも英国アイテム、Hilditch&KeyのシャツにHoliday&Brownのプリントタイ。シャツ襟の角度とゴージラインが平行に揃っていて気持ちがいい。モードでもクラシックでもないものを目指した結果、ファッションの多様化に合わせた「どのような着方もできる」スーツに仕上がった。写真のツイード(英国Moon社のもの)を含め素材は3種類の展開。先日ご紹介した同型のネイビーコーデュロイ素材はおかげさまで、ほぼ完売。「セレクトショップオリジナル」は、ともすればインポートブランドの廉価版だと思われ勝ちだし、実際にそういうものも横行しているが、本来はそうでないはずだ。「必要だけど、世の中にない。だから作る」ものだと思う。パリやミラノでコレクションが発表された翌日にはアジアでコピー品の生産に取りかかるような今のご時世。この速さに対抗できるのは知恵と工夫とセンスしかない。あとは磨くだけだ。














