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STORY

『ルーベンス展ーバロックの誕生』の前に,ルーベンスのお宅訪問 in ANTWERPEN

来週から国立西洋美術館で『ルーベンス展ーバロックの誕生』が行われるんですね。そんなこと全く知らずに先月、ルーベンスさんの家を訪ねてアントワープまで行ってきました。1枚目の写真は世界一美しい駅舎と評されるアントワープ中央駅の床スレスレからヴィンテージ広角レンズで撮影!大きな美術館があまり得意ではないボクとしてはこの手の自宅系美術館がむちゃくちゃツボでけっこうあちこち訪ねております。パリの自邸アトリエならギュスターヴ・モロー美術館、ロダンのビロン館、郊外なら人気のジヴェルニーにあるモネの家とかかな?東京なら台東区谷中の朝倉彫塑館もいいですよねー。何が楽しいって画家の生活感がモロに感じ取れる事。どんな光に包まれて描いていたのか?これが北向き全面窓のアトリエで体験出来る事。そして一番グッと来るのが台所!ここで作って食べてたんだーなんて思うととたんに親近感が涌くんです。当時の食器なんか置いてあったりすると時代考証の資料として骨董好きとしては、最高の勉強になります。今までに、御活躍中の芸術家さんの自宅を、パリ時代に数軒お邪魔した事がありますが、やはり芸術家ならではの独特の美意識で装飾&カスタムされてるんですよねー。何となくなんですが、その人が描いた絵にとって、一番居心地が良いのはその人んちの壁な気がするんです。だってその家の光線で描かれ、そしてその画家が完成とした光の元で見る事こそ、絶対に正解なわけじゃないですか?その環境で描かれた絵は絶対にそのアトリエが帰る家だと思うんです。まさにホームポジション。だから自宅アトリエ開放系美術館が好きなんだろーなーと感じるのかも知れません。さて、そんなフランダースの犬・ネロを魅了したルーベンスさんのご自宅、内部はいかに??いきなりですがこちら中庭側から建物を見上げたところ。隙間無く装飾で埋め尽くされております。ここは台所になるんでしょうか?鉄の質感にゾクゾクします。石造りの建物ならではの構造のマントルピースですねー。無造作に置かれた陶器のピッチャーもキュレーションされているのでしょうか?ホントにルーベンス使用陶器なら接写しておきたいところだけど、どうかなー?そして壁各所になんともかわいらしい肖像画が多数。そして光が印象的なこんな絵も写真用語で「レンブラント光」というのがあって、斜め45度上空から立体物を照らした時の陰影でドラマ性を演出する照明のあて方のことなんですが、こちらルーベンスも印象的な『照らし出す光』を感じますよね。この薄暗い、ルーベンスが生活した本物の室内で絵を見ると、この重厚さはこの環境から・・・なんてイメージが涌いてきます。外装もそうなんですけど、隙間無く装飾で埋め尽くすこの感じ、もっともっと勉強せねばと思います。日本人、及びファッション業界ってこの20〜30年、引き算の美学追求でシンプルこそ素敵!なんてカルチャーがセンターに君臨しております。このバロック・ロマンのオーバーデコレーションって対極にあるオルタナティブな存在。コレを何とかスノッブに生活の中に切り取れないかなーなんて空想しながら見て回りました。いやー、むせ返る程のこってり味です。この部屋の光源は当然ロウソク&アルコールランプのようなものしか、時代的になかったと思うんですが、視力とか大丈夫だったのかなー?まあ、住居なのでここで絵は描いてないと思いますが・・・。昼でも真っ暗です。家具も使う為と言うより、見せる趣旨が重要なんですねー。スゴい。そしてディテールもぬかりなし・・・。けっこう直線的なのが好みです。この世界にファッション感覚で切り込んだ人、誰もいないしなー。広告写真ならありそうだけど・・・。最後にかわいいお庭がこちら。外に出ると余りにも眩しいアントワープの初秋の光が満ちあふれておりました。絵は、通常それを引き立てる額縁と言うものに収まっております。でも実はその絵がかけられている壁も作品の一部だと思うんです。空間込みで鑑賞者に染み込ませる、そんな感覚が住居アトリエ系美術館にはあります・・・。ホントにここはオススメです。
Manabu Kobayashi

Slowgun & Co President小林 学

1966年湘南・鵠沼生まれ。県立鎌倉高校卒業後、文化服装学院アパレルデザイン科入学。3年間ファッションの基礎を学ぶ。88年、卒業と同時にフランスへ遊学。パリとニースで古着と骨董、最新モードの試着に明け暮れる。今思えばこの91年までの3年間の体験がその後の人生を決定づけた。気の向くままに自分を知る人もほぼいない環境の中で趣味の世界に没頭できた事は大きかった。帰国後、南仏カルカッソンヌに本社のあるデニム、カジュアルウェアメーカーの企画として5年間活動。ヨーロッパでは日本製デニムの評価が高く、このジャンルであれば世界と互角に戦える事を痛感した。そこでデザイナーの職を辞して岡山の最新鋭の設備を持つデニム工場に就職。そこで3年間リアルな物作りを学ぶ。ここで古着全般の造詣に工場目線がプラスされた。岡山時代の後半は営業となって幾多のブランドのデニム企画生産に携わった。中でも97年ジルサンダーからの依頼でデニムを作り高い評価を得た。そして98年、満を持して自己のブランド「Slowgun & Co(スロウガン) / http://slowgun.jp 」をスタート。代官山の6畳4畳半のアパートから始まった。懐かしくて新しいを基本コンセプトに映画、音楽等のサブカルチャーとファッションをミックスした着心地の良いカジュアルウェアを提案し続け、現在は恵比寿に事務所を兼ね備えた直営店White*Slowgunがある。趣味は旅と食と買い物。