アーヴィング・ペン撮影によるアルフレッド・ヒッチコック。「 ON THE EDGE images from 100years of VOGUE 」より。昨今は Instagram などの SNS を通して、著名人などの私生活を「のぞき見」することが世界中に普及しているわけですが、よく考えてみたらこれ「のぞき見」じゃないですよね?だって、相手は見て欲しくて見せてるんだから。つまり向かいの部屋を双眼鏡で覗いてるんじゃなくて、下着姿で外をうろうろ出歩いている人を見ているだけ。勿論、経済効果や承認願望的な下心があるから本人も「見て欲しい」わけなんですけど。ただ、「隠してあるから見たい」という欲求を刺激しない分だけエロスはありませんよね。全部見せちゃあオシマイよ、っていう(笑)。逆に、これ( SNS 拡散)を経済活動だと捉えたら、見せないと商売にならないわけです。例えばオンラインショップで売る商品のブツ撮りはディテールまで全部見せなくちゃならない。一方でファッション写真ならば全部が写っている必要がない。カタログじゃないんだから。その分だけファンタジーやストーリーを想像できればいいわけです。
いま世の中はロゴブーム。全身にロゴが入ってるので「そのダウンどこの?」と聞くまでもなく「見りゃわかる」という「全部見せファッション」が大流行。というか「他人に見て分かってもらわないと大枚ハタいて買った甲斐がない」という意図なので、これも立派な経済活動。トラディショナルなアイテムが持つアノニマス性はこの対極に位置します。見て分かるのは服オタクだけなので。さらに言うと、トラッドアイテム(フツーのラムウールのセーターやボタンダウンシャツ)に馬のロゴを入れて大成功をおさめたのがラルフローレンだと個人的には思っています。立派なビジネスマンです。
「見せる」と「隠す」、どっちがいいの?とかそんなことは決める必要がないし、最近ではデムナ・ヴァザリアなど、その両方を自在に操作することでモノや情報の希少性を高める器用な若手デザイナーも出てきました。ヤリクチとしては「裏原」です。あら、こんなところにも90年代リバイバルの波が…。
話は戻って『裏窓』。ヒッチコックがデザイナーのイーディス・ヘッドに「マイセンの陶器のような、簡単には手に入らない高級品のような存在に見せたい」と依頼して作らせたグレース・ケリーの衣装たち。気品溢れるグレースと背中が大きく大胆に開いたドレス。今から20年前に観た60年前の映画にもかかわらず、まるでファンタジーのような美しさで今も僕の脳裏に焼き付いています。エロスでも経済でもなく、このようなものを総じて僕らは「クラシック」と呼ぶのだと思います。













