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STORY

イアンの靴

かつて僕の自宅には大量のCDがありました。CD、というところが90年代感丸出しです。僕も妻も音楽が好きで、学生時代から買い漁っていたので、結婚を機にふたりで暮らし始めた頃は、大きなラックに収まっている(収まっていなかったかな…)CDはその数2,000枚…。最近になってさすがに整理しようと思い、半年前に1,000枚ほどダンボールに詰めて DISK UNION へ送り買い取ってもらいました。その際、夫婦で「売るもの」と「残すもの」に選別するのですが、そもそも趣味が近いこともあり(お互いが1枚ずつ所有していたせいで)同じ盤が2枚出てくることもしばしば。そんな中、なぜか同タイトルで3枚も(?)所有していたのが1990年リリース、DCハードコアの名盤 Fugazi の「 Repeater 」です。変幻自在のソリッドなギターや変拍子を多用した、カクカクしたリズムが超絶カッコいいこのバンドを率いるのは、元・ Minor Threat のイアン・マッケイ。ここ数年フツーに大流行中の Vans 「 Old Skool 」が世界一似合うのは彼だと、僕は思っています。10年ほど前、渋谷・円山町のライブハウスへイアンのバンド The Evens を観に行ったとき彼が何を履いていたのか全く見えませんでしたが…。

僕はスニーカーをほとんど履きません。1年に10日くらいしか履きません。学生のころは割と履いていましたが、当時(10代後半)は全身 COMME des GARÇONS を着て、ワイドパンツの足元に Vans のチェッカーフラッグ(赤×白)のスリッポンや(当時普通に USA 製が売っていた)レザーの Jack Purcell を合わせていた時代も早20年以上前の話。結局、イアン・マッケイやカート・コバーンの激しくカッコいい生き様を知って以来、 Vans も Jack Pursell もすっかり履けなくなってしまったわけです。絶対に敵わないくらい似合っているアイコンを見ると逆に戦意喪失してしまうんですね。僕の場合は。まぁ、負け戦は挑まないタイプとも言えますか(笑)。


ちなみにカートが履いてる Jack Purcell の爪先には落書きがしてあります。これは Pearl Jam のエディ・ヴェダーが Fugazi のスペルを「 Fuhgawz 」と間違ったことをバカにして、カートがわざと書いたという話は有名です。仲が悪かったみたいですしね、 Pearl Jam とは…。ともかく、偉大なるスニーカーアイコンへのリスペクトを胸に、今日も僕は革靴を履いて出かけます。これは人それぞれだとは思いますが、僕の場合は「履かないこと」が敬意です。万が一、街でモヘアカーディガンに Jack Purcell を履いた僕を見かけたら、叱ってください。お前、忘れたのかよって。
自分のスタイルを形成する上で「これしかやらない」と決めることは大事ですが、逆に「これだけはやらない」と決めることも意外と重要なんじゃないかなと思うのです。
Satoshi Tsuruta

International Gallery BEAMS Staff鶴田 啓

熊本県出身。1978年生まれ。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻にまったく興味を持てず、飲食店でアルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。新宿・ビームスジャパンのデザイナーズブランドを中心に扱うメンズフロア(当時)に配属となる。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動し現在に至る。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆まで手がける。ワードローブのモットーは「ビスポークのスーツからボロボロのジーンズまで」。趣味は音楽・映画・美術鑑賞、旅行、落語、酒場放浪、料理、服。二児の父。

REVIEW