(以下の4つのポイントはボク自身の『好き』な部分をどのように服のディテールに落し込んだのかをまとめた物です。)

(1)ボクの主観的最高濃度期・・・ブライアン・ジョーンズが亡くなってからロン・ウッドが加入するまでの69〜74年。いわゆるミック・テイラーがリードGをつとめていた5年間。
この時期、72年の代表作『 Exile on main st ・メインストリートのならず者』ここ1点に物作りのヴィジュアルを集中することに。
(2)実はこのアルバム『 Exile on main st ・メインストリートのならず者』のレコジャケ、内ジャケ写真は、かの現代写真の父、ロバート・フランクによるものなのです。更に内ジャケ写真の一部分には伝説の写真集『 The Americans 』から数枚借用していることをご存知でしょうか?ロバート・フランクのマーチャンってあまり例がなくというより見たこと無いのでレコード会社にそーっと確認したところ、使用可能アイテムにこのアルバムが含まれれいるので全てOK!とのこと。よって晴れてロバート・フランク撮影の写真よるボクオリジナルのコラージュプリント裏地作りに取りかかった訳です・・・。
(3)皆様、ストーンズの有名なアイコンマークの LIP&TONGUE (唇と舌)が、実はアンディ・ウォーホルのデザインである事をご存知でしょうか?今回のプロジェクトではメタルボタンにこの LIP&TONGUE のモチーフを男子学生服のボタンの様に半立体で表現することを企画し、米国よりオフィシャルで許諾も取れたのです。即、社内で粘土でのイメージ模型を作り、大阪のヴィンテージな学ランボタン工場にて作製を依頼いたしました。
(4)生地は同じくアンディ・ウォーホルの LIP&TONGUE をジャガード織りでの表現を目指しました。20有余年もの間、コムデギャルソンの最も難しい生地を作り続けていた一宮のテキスタイルチームに依頼。1種類の柄を完成させるため12種類の試織を繰り返しました。ウール地は最後に水蒸気で蒸して風合いを出しますが、ここで縦・横の収縮差で柄が歪むんです。織り物なので。この加減の調整と色調整には手こずりました。プリントならいとも簡単なんですけどね。
皆さん、このローリングストーンズスタジャン、当初の生産予定は2色で50着だったんです。通常わずか50着の為に裏地を図案構成から作ったり、ボタンを金型から作ったり、見頃のジャガードの試織を12種作るなど、ビジネス的には完全に暴挙なのです。残った利益はほぼサンプルロットの生産コストで消え去り、型代、金型代でマイナスが出るのは目に見えておりました。アメリカのライセンシー会社との契約でミックとキースの為に4着の完成品を送る事も条件でしたし・・・。
しかし、女神は微笑んだのです。ここでは敢えて書きませんが、広告費に換算したら『億』な出来事が展開直前に起きたのです・・・。
かくして、ローリングストーンズ50周年記念オフィシャルスタジアムジャンパーは完成し、店頭に並ぶ事無く秒速完売、そして製品のない50周年パーティーの日を迎えました。このプロジェクトでボクは完全燃焼しました。口座の資金も燃え尽きました。ただ、作り手として一切妥協せず、極めて私的な趣味性を貫いてもOKな製作の機会なんてそうそう頂ける物ではございません。そういった意味でその夜、ボクは最高の幸せ者になれたのでした・・・。

















