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STORY

人類の為の The Beatles と 私だけの Misfits 。

今までにビートルズが嫌いだ!と正面から言い放つ人と出会ったことがない。ビートルズはウルサ型の音楽評論家からも、いぶし銀のミュージシャンからも絶大なる支持を集めている。なのに実家の母もビートルズを愛してやまない。音楽の玄人から素人まで幅広くファンを獲得している訳だ。大概、めんどくさい玄人は、初心者が理解を示せるような物なんて語るに値しない、これはアマチュア向きだな!なんてコメントを遠回しに挟んでくるものだ。しかしビートルズは違う。ナゼなのか?ナゼ、プロアマ問わず取り込めるのか??ボクは風呂に入りながら考えた。そして今のところの結論はこれだ。

ビートルズは明確な2つの相反する側面を備えているように思うのだ。例えば、解り易さと難解性、真面目と不良、懐かしさと革新性・・・・。 こんなイメージ。難しいだけならジャーマン・プログレバンドにでも任せておけばいいし、解り易さなら流行歌専門のプロデューサーに頼めばいいのだ。ビートルズという山の頂を目指す場合、この2側面のルートがあるのでどちらのフックにカラビナを引っ掛けるかで、登り手は技量に応じた快感を得る事が出来るのだろう。しかし凄いよな、ビートルズって。この2側面がバンドのなかに混在していて、作品に深みを増しているのだから。評論家にも実家の母にも引っ掛けるフックが作品のなかに必ずあるなんて、そうそう作れる代物ではないと思うのだ・・・・。

前フリはこの位にして・・・そうなんです。最近、デザインの仕事中にスタッフとの間でよくこの話になるんです。もちろん BGM はビートルズでね。

今、考えているデザインの服はビートルズ的か?皆にとって正義か? PEACE か?平和か?正しいサイズか?中学校の教科書に載れるか?オブラディオブラダか?女にモテるか?税金野郎なんて曲をかける程売れるのか・・・?果たしてこの360度、誰にとっても正しい服は良い服なのであろうか???


ボクはここでオモムロにCDをかけ替えるのです。実は最近仕事中の BGM はほぼコレなんです。

「 Misfits 」

77年にアメリカで結成されたカルトなホラーパンクバンドで、前髪を前方に長ーく垂らして悪魔の槍をイメージした通称デビロックヘアがトレードマーク。結成時から最近までギター、ベースの衣装は江頭2:50とほぼ一緒。40年間衣装がほぼ同じ。初期の名曲の数々は後のメロコアバンドに多大なる影響を及ぼした・・・。代表曲は『 I Turned Into a Martian (私は火星人になってください)』意味不明です。はい、この段階で100人中98人が嫌悪感です。うるさいし。

でもね、2人いるじゃないですか、魂の同志が。皆にとって均一の正義って正しいんですか?
ボクは15歳の頃から50歳の今日まで、親からは「そんな変なかっこして!」と言われ続けている訳だし。やっぱり、ファッションでビートルズをコンセプトにするのは無敵すぎて、どうもシックリきません。メタリカもシュプリームも Misfits をフォローしてもビートルズには触んないしね。これが答えかな。なんて嘯いたりして・・・。

だから・・・ビートルズを聞きながら仕事をするのはもういいや。嫌いとは言わないけど、ビートルズという部屋がボクにとっての心地よい場所でないことだけは確かだな。

Manabu Kobayashi

Slowgun & Co President小林 学

1966年湘南・鵠沼生まれ。県立鎌倉高校卒業後、文化服装学院アパレルデザイン科入学。3年間ファッションの基礎を学ぶ。88年、卒業と同時にフランスへ遊学。パリとニースで古着と骨董、最新モードの試着に明け暮れる。今思えばこの91年までの3年間の体験がその後の人生を決定づけた。気の向くままに自分を知る人もほぼいない環境の中で趣味の世界に没頭できた事は大きかった。帰国後、南仏カルカッソンヌに本社のあるデニム、カジュアルウェアメーカーの企画として5年間活動。ヨーロッパでは日本製デニムの評価が高く、このジャンルであれば世界と互角に戦える事を痛感した。そこでデザイナーの職を辞して岡山の最新鋭の設備を持つデニム工場に就職。そこで3年間リアルな物作りを学ぶ。ここで古着全般の造詣に工場目線がプラスされた。岡山時代の後半は営業となって幾多のブランドのデニム企画生産に携わった。中でも97年ジルサンダーからの依頼でデニムを作り高い評価を得た。そして98年、満を持して自己のブランド「Slowgun & Co(スロウガン) / http://slowgun.jp 」をスタート。代官山の6畳4畳半のアパートから始まった。懐かしくて新しいを基本コンセプトに映画、音楽等のサブカルチャーとファッションをミックスした着心地の良いカジュアルウェアを提案し続け、現在は恵比寿に事務所を兼ね備えた直営店White*Slowgunがある。趣味は旅と食と買い物。