



『タクシードライバー』そしてトラヴィス覚醒へ。
映画公開年の1976年とはベトナム戦争終結宣言(73年)の3年後であり、米世論がナム戦とは何だったのか?俺たちやっちまったんじゃねーか??等々の総括に喘いでいる真っ只中である。劇終盤、トラヴィスは第二次大戦のヒーローが着ていたオールドファッションなブルゾンを脱ぎすて、最新ミリタリーウェアである M65をまとった制裁マシーンへと覚醒する。M65とはその名の通り65年から投入が始まった JK でこの時期の象徴的なアイテムだ。我々日本人が懐かし名画としてこの映画を見る時、M65をファッションアイテムと捉えてしまう。しかし当時のアメリカ国民からすれば矛盾だらけの戦の生き写しの様な服なのだ。
トラヴィスの突入は狂気なのか正義なのかこの映画自体でもあえて曖昧にしている。これはナム戦総括の取り扱いに等しく映画の主題へとつながる。だからトラヴィスは WW2の軍服でラストの突入を迎えてはならず、M65に着替える必要があったのだ。少女を悪人から救い出し、一躍時代のヒーローになったトラヴィスは何事も無かったかの様にタクシードライバーに戻る。衣装はもちろんタンカース。ぶきっちょで古風な男を印象づける為に。・・・と思わせといてラストのベッツィーを乗車させたシーンでのルームミラーに写るトラヴィスの眼光が眠れる狂気を感じさせる。
つづく
>>古着解体新書シリーズ第4話 映画『タクシー・ドライバー』余談です。


















