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STORY

古着解体新書シリーズ第3話 映画『タクシー・ドライバー』トラヴィス覚醒へ。



『タクシードライバー』そしてトラヴィス覚醒へ。




映画公開年の1976年とはベトナム戦争終結宣言(73年)の3年後であり、米世論がナム戦とは何だったのか?俺たちやっちまったんじゃねーか??等々の総括に喘いでいる真っ只中である。劇終盤、トラヴィスは第二次大戦のヒーローが着ていたオールドファッションなブルゾンを脱ぎすて、最新ミリタリーウェアである M65をまとった制裁マシーンへと覚醒する。M65とはその名の通り65年から投入が始まった JK でこの時期の象徴的なアイテムだ。我々日本人が懐かし名画としてこの映画を見る時、M65をファッションアイテムと捉えてしまう。しかし当時のアメリカ国民からすれば矛盾だらけの戦の生き写しの様な服なのだ。

トラヴィスの突入は狂気なのか正義なのかこの映画自体でもあえて曖昧にしている。これはナム戦総括の取り扱いに等しく映画の主題へとつながる。だからトラヴィスは WW2の軍服でラストの突入を迎えてはならず、M65に着替える必要があったのだ。少女を悪人から救い出し、一躍時代のヒーローになったトラヴィスは何事も無かったかの様にタクシードライバーに戻る。衣装はもちろんタンカース。ぶきっちょで古風な男を印象づける為に。・・・と思わせといてラストのベッツィーを乗車させたシーンでのルームミラーに写るトラヴィスの眼光が眠れる狂気を感じさせる。
つづく

>>古着解体新書シリーズ第4話 映画『タクシー・ドライバー』余談です。
Manabu Kobayashi

Slowgun & Co President小林 学

1966年湘南・鵠沼生まれ。県立鎌倉高校卒業後、文化服装学院アパレルデザイン科入学。3年間ファッションの基礎を学ぶ。88年、卒業と同時にフランスへ遊学。パリとニースで古着と骨董、最新モードの試着に明け暮れる。今思えばこの91年までの3年間の体験がその後の人生を決定づけた。気の向くままに自分を知る人もほぼいない環境の中で趣味の世界に没頭できた事は大きかった。帰国後、南仏カルカッソンヌに本社のあるデニム、カジュアルウェアメーカーの企画として5年間活動。ヨーロッパでは日本製デニムの評価が高く、このジャンルであれば世界と互角に戦える事を痛感した。そこでデザイナーの職を辞して岡山の最新鋭の設備を持つデニム工場に就職。そこで3年間リアルな物作りを学ぶ。ここで古着全般の造詣に工場目線がプラスされた。岡山時代の後半は営業となって幾多のブランドのデニム企画生産に携わった。中でも97年ジルサンダーからの依頼でデニムを作り高い評価を得た。そして98年、満を持して自己のブランド「Slowgun & Co(スロウガン) / http://slowgun.jp 」をスタート。代官山の6畳4畳半のアパートから始まった。懐かしくて新しいを基本コンセプトに映画、音楽等のサブカルチャーとファッションをミックスした着心地の良いカジュアルウェアを提案し続け、現在は恵比寿に事務所を兼ね備えた直営店White*Slowgunがある。趣味は旅と食と買い物。