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STORY

フレンチシック

「フランス風」って何?

食べ物で言うと「フランス風」すなわち「フレンチ」と名前が付くものはいくらでもある。「フレンチフライ」「フレンチドレッシング」「フレンチトースト」「フレンチクルーラー」…などなど。羅列の途中あたりから「本当にそれが本場フランス風なのかどうか?」が徐々に怪しくなってきますねぇ。僕が小学生くらいの頃にハウス食品からリリースされた「カレーマルシェ」というシリーズは「欧風カレー」というコピーを標榜しており、リリースには「牛肉とたっぷりのマッシュルームを、コクのあるまろやかな味わいのソースで煮込みました。ブイヨンと生クリーム等の乳製品の味わいが生きている本格欧風カレー」と書いてあるし、マルシェ(仏: marché)という名前からしておそらくは日本人目線で「フレンチカレー」をイメージしながら開発されたものだろう。あと、例えば犬種。「フレンチブルドッグ」はイギリスのブルドッグが起源で、産業革命期にフランスに渡り品種改良されて人気が出たことが発端らしい。イギリスのレース編み職人たちが小型ブルドッグを連れてフランスに移住したんだってさ。つまり、ルーツはイギリス。

ともかく料理名「フレンチ〇〇」の由来をいちいちつぶさに調べるほど僕は根気強くもないので(どうせ諸説あるんだろうし)、ここでは一旦スルーするとして(カレーマルシェは幼少期の僕に衝撃を与えるくらい美味しかったですよ)今日の本題は何かと言うと「フレンチシック」とか「フレンチトラッド」みたいな言葉を端っから信用していない僕が「DEAD KENNEDYS CLOTHING」の最新コレクションをなんとなく「フランス風」に作ってみました、という話。冒頭から既に底意地の悪さが滲み出ています。


























以上のイメージルックを見て頂ければ分かる通り、「玄人筋のフランスかぶれ」であればあるほど「こんなん、どこがフレンチじゃい!」と歯ぎしりが止まらなくなるような内容。しかし、よーく考えてみてもみなくても「Hermès」「森の番人」「ニュースボーイキャップ」「OLD ENGLAND」「バスクシャツ」「ベレー」「サガンベスト」「180シグニチャーローファー」を小粋に着こなせば誰でも「フレンチシック」になれるのかというと「そんなわけない」ってことがすぐに分かる。だって、僕がいま並べたそれって、ただの固有名詞ですよね?前回のブログでも「洋服とはそもそも道具であったこと、ファッションとはそもそも人であったこと」なんて書いている通り、僕はブランドを信じない。より正確に言えば「ブランドの本拠地やデザイナーの国籍そのものが固有のテイスト・スタイルを即座に意味する」とは考えていない。「1960年代~1980年代にかけてフランス人がアメリカ/イギリス発祥のベーシックアイテムをフランス人らしく自由に着こなす姿を横目で見ていた外国人が勝手に『どうして僕らとは違う感じに仕上がるんだろう?』と溜息をついた」=「フレンチトラッド」なわけで、ほら、問題はやっぱり「人」なんですよ。そういった意味では1970年頃に自らを「ジャングル・ジャップ(Jungle Jap)」と名乗ることで自虐的な笑みを浮かべながらパリモードの世界へ突進していった高田賢三氏の方がよほど信用できるし、そういった個人主義こそが圧倒的に「パリしてる」と思わせてくれるという逆説。

「フレンチブルドッグ」はイギリスからの輸入だし、ヌーベルバーグの作家たちが参照したのはネオ・リアリズモとヒッチコックだった。まぁ、どうでもいいデスね。ということで。

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『FRENCH-SICK』

シックになんてなれるわけない。
シックになんてなれるわけない。
シックになんてなれるわけない。
そんなんでシックになんてなれるわけない。

よく見れば、ただのアメカジ。
ロベルト・ロッセリーニはイタリア人。
黒いタートルネックセーターは実存主義者のユニフォームだってばよ。

そんなんでシックになんてなれるわけない。
全然、遠くまで行けない。
当たり前。
あきらめたまえ。
病み上がり。

 NEJIによるブランド・DEAD KENNEDYS CLOTHINGが展開するのはNEJIの妄想を形にしたエレガントでエキセントリックでパーソナルなドレスアイテム群。洋服を着るだけでシックになんてなれるわけない。

 つまり、結局、クラシックとは赤の他人なのである。アガメタテマツレ、古典。パリはお前を呼んでいないって、さ。

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 【DEAD KENNEDYS CLOTHING 2024 FRENCH-SICK】は2024年12月14日(土)、15日(日)に高円寺「Bon Vieux」で開催される「ねじ店2024 結びの一番」にてリリース予定です。

そうそう、そう言えば今から4~5年前(2020?)にBEAMSのオフィシャルサイト内で「フレンチアイビー再燃」について大きな疑問符を投げかけたコラムを書いているので、もしお時間あればご参照ください。
MR BEAMS「翻訳不能①」
MR BEAMS「翻訳不能②」
当時から言ってることが変わりませんね、我ながら。それにしても「ナポリタン」や「カレーパン」はきっと世界に通用する味なんじゃないかなぁ。

Satoshi Tsuruta

NEJI Organizer鶴田 啓

1978年生まれ。熊本県出身。10歳の頃に初めて買ったLevi'sをきっかけにしてファッションに興味を持ち始める。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻に興味を持てず、アルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを本格的に決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆などを16年間にわたり手がける。2021年、22年間勤めたビームスを退社。2023年フリーランスとして独立、企画室「NEJI」の主宰として執筆や商品企画、スタイリング/ディレクション、コピーライティングなど多岐にわたる活動を続けている。同年、自身によるブランド「DEAD KENNEDYS CLOTHING」を始動。また、クラウドファンディングで展開するファッションプロジェクト「27」ではコンセプトブックのライティングを担当し、森山大道やサラ・ムーンら世界的アーティストの作品にテキストを加えている。