築100年を超える古民家。ロケーションとしては想像の遥か上をいく素晴らしさで、撮影は順調に進んだ。ひとしきり撮り終えた後で、T氏の奥様からおもてなしで供されたすだちそばや御香香(おこうこ、という単語に含まれる『香』の多さに、いまさら驚く)を、撮影クルーみんなで囲炉裏(いろり、って言葉には自然と『囲』という漢字が入っていることに、いま静かに納得する)を囲みながら頂くことになった。子供らも皆「おいしい、おいしい」と言いながら、そばはあっという間になくなってしまった昼下がり。小中学生たちはリビングに移り楽器を弾いたり書棚を眺めたりしている。撮影に少し疲れてしまったT氏を上座において、本件に同行してくれた山下英介氏と僕は緩やかな座談を繰り広げた。囲炉裏にはアルミホイルで包んだジャガイモが雑然と放り込んである。
1978年生まれ。熊本県出身。10歳の頃に初めて買ったLevi'sをきっかけにしてファッションに興味を持ち始める。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻に興味を持てず、アルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを本格的に決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆などを16年間にわたり手がける。2021年、22年間勤めたビームスを退社。2023年フリーランスとして独立、企画室「NEJI」の主宰として執筆や商品企画、スタイリング/ディレクション、コピーライティングなど多岐にわたる活動を続けている。同年、自身によるブランド「DEAD KENNEDYS CLOTHING」を始動。また、クラウドファンディングで展開するファッションプロジェクト「27」ではコンセプトブックのライティングを担当し、森山大道やサラ・ムーンら世界的アーティストの作品にテキストを加えている。
「オーダーしたからこそ馴染んだ」と思えたもの、そんなモノが男にはある。AMVERが選んだオーダー品はどんなものなのか。
買ったけれど着ない服、いまとなっては着ない服、袖を通すことができない服……。1900年初頭にフランスで作られたリネンシャツ、Trout manのシャンブレーシャツ、貴重なポパイのTシャツなど、AMVARたちの「着られない服」。
90年代のゴムバンド Swatch、織り糸に水を弾く機能を持たせたエピックナイロンのシリーズ、ウィリス&ガイガーのブッシュポプリン製サファリジャケット……AMVARたちの雨の日のスタイル
80年代リバイバルのアルマーニのスーツ、春の曇天にはぴったりな“グレージュ”、そしてデニム。AMVERたちが手にした春のセットアップ。