股上27.5㎝、ノープリーツ・ワンダーツの細長いウエスト周り。フラシの状態で裾幅28㎝のバギーシルエット。ずっと探していたわけではない(そもそも僕はものを探さない)けれど、「あ、そーそー、これくらいのヤツ、今ならちょうどいいかもね」と納得できる感じ。サイズがやや大きかったので、ウエスト~ヒップを2.5㎝詰めて「ベルトで固定もできるけど、ちょい腰穿きもできる」くらいの寸法に直した。
そして、股下。新品やデッド品パンツの醍醐味は裾上げにある。フラシの状態で股下93㎝のたっぷり丈を生かし「厚めのダブル」で裾上げすることにした。股下を78㎝だとして、残りの生地は15㎝。もうこうなったらギリギリまで厚ぼったく折り返してやろうとダブル幅6.5㎝に指定したところ、細身の栗蒸し羊羹みたいな長方形が出来上がった。仕上がりを見て「これ、正解なのか不正解なのか、いまいち分からんな」と思ったけれど、まぁいっか。細身のレザーシューズと合わせてみよう。
そしてもう一本、同じく古着で見つけたDickie'sのデッド品。ポリエステル85%、WOOL15%でストレッチ性のある生地。ぱっと見はツイル織に見えたけど、触ってみたらジャージー素材だった。
紙タグにはしっかりと「Dickie's knits」=「ニット、すなわちジャージー素材」と書いてある。ヒップには「BAN-ROL」というウエストバンドのメーカータグまで付いている。四角いLポケ、幅広のベルトループ、細身のセミフレア、ワイン色。先に紹介したAquascutamのパンツと同じ年代の匂いがビシビシに感じられる。そこまで珍しいパンツではないと思うけれど、気に入った。
この二本のパンツを前にして思う。ハイクオリティもローフィデリティもどちらもイケる口の僕は、やっぱり「なんかカッコいいパンツないかな~」という程度の漠然としたイメージでしかモノを探さない、探せない。実際に英国製の高級テーラードパンツと米国製のチープなワークパンツではベクトルが違い過ぎて、同じ路線では探しようもない。国も値段もスタイルも、なにひとつ共通項はない。と思いきや、一つだけあった。「どちらもセンタープレスが入っている」という点。そして、その奥にもう一つ見つけた。それは「センタープレスが取れにくい」という点。ガリガリのキャバルリーツイルも、タグに「NEVER NEEDS IRONING」と書いてあるポリエステルも、結局はそういうことか。つまり、割と雑に穿いてもピシッと見える。結局、めんどくさがりな僕のところに集まってくるアイテムはそういうものだってこと。
洋服を着続けていると自分の性格が繁栄されたスタイルが自然と形成される、って実に人間らしい。
1978年生まれ。熊本県出身。10歳の頃に初めて買ったLevi'sをきっかけにしてファッションに興味を持ち始める。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻に興味を持てず、アルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを本格的に決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆などを16年間にわたり手がける。2021年、22年間勤めたビームスを退社。東京・外苑前のセレクトショップMANHOLE内にある企画室「NEJI」(https://manhole-store.com/neji )の主宰としてバイイング/販売はもとより、執筆や商品企画、コピーライティングなど多岐にわたる活動を続けている。また、クラウドファンディングで展開するファッションプロジェクト「27」ではコンセプトブックのライティングを担当し、森山大道やサラ・ムーンら世界的アーティストの作品にテキストを加えている。
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