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STORY

古着界における趣味の良さって??

元同僚から教えてもらった口頭伝承的なお話です。その昔、80年代初頭の原宿にア・ストア・ロボットという店が出来ました。日本に於けるロンドンパンクカルチャーの始祖的なお店で伝説と言うか今でも神格化されておりますよね?そのア・ストア・ロボット伝説の初期バイヤーの方の名言です。『かっこいい服なんて新品屋さんに行けばいくらでもあるだろ?だから俺は海外から古着をバイイングする時、かっこよさとか趣味の良さでなんて絶対に選ばない。時代のあだ花とか先取りしすぎた未来とか。規格外のバットテイストこそ古着の存在意義なんじゃねーの?』とのこと。この一言を聞いたのはボクは20代後半で60年代以前に作られていた服しか着ない宣言を頑なに守る変態野郎でガツーンとやられました。真っ先に瞼に浮かんだのはフライドチキンにチョコレートとナッツを振りかけて食べるエルビスプレスリー。もしくはキング・オブ・バットテイスト デヴィッドリンチの50’Sベースの映画、マルホラントドライブとかブルーベルベットとか。アメリカンゴールデンエイジのB面的感覚がみょーにこの名言にマッチする気がしたんです・・・。そんなバットワードを胸にデザイナー歴は気付けばはや25年。本日こんな気持ち悪い服を作ってみました。ベースは90年製通称チョコチッププリントのBUDジャケットで60年代にヴェトナムで流行したPXカスタム(基地の売店内で使いやすいようにカスタムするサービス)風にチャイナジャケットにアレンジ。このチョコチップ、81年から地味に採用されてるんですが湾岸戦争が始まるや否や目立ちすぎるからアカン!と現場兵士からダメ出しを喰らい、すぐにコーヒーステインという極めて地味な迷彩に取って代わられた、いわば戦争に捨てられた柄なんです。なのにストリートブランドは大好物でシュプリームや裏原系など90年代ストリートを代表するアイコニックな迷彩として記憶に刻まれている数奇な運命を辿ったミリタリー界のバットテイスト王なんです。今回中華カスタムがテーマなのでチャイナボタン以外にも異様に大きすぎるシャツ襟もスタンドカラーにメタモルフォーゼ。今のボクでは、古着ならばこの位毒っ気がないと退屈なんですよねー。明日もこれを着て仕事します。100M先からでも見つけてもらえる隠れる気ゼロ迷彩は最高に気分が上がります。
Manabu Kobayashi

Slowgun & Co President小林 学

1966年湘南・鵠沼生まれ。県立鎌倉高校卒業後、文化服装学院アパレルデザイン科入学。3年間ファッションの基礎を学ぶ。88年、卒業と同時にフランスへ遊学。パリとニースで古着と骨董、最新モードの試着に明け暮れる。今思えばこの91年までの3年間の体験がその後の人生を決定づけた。気の向くままに自分を知る人もほぼいない環境の中で趣味の世界に没頭できた事は大きかった。帰国後、南仏カルカッソンヌに本社のあるデニム、カジュアルウェアメーカーの企画として5年間活動。ヨーロッパでは日本製デニムの評価が高く、このジャンルであれば世界と互角に戦える事を痛感した。そこでデザイナーの職を辞して岡山の最新鋭の設備を持つデニム工場に就職。そこで3年間リアルな物作りを学ぶ。ここで古着全般の造詣に工場目線がプラスされた。岡山時代の後半は営業となって幾多のブランドのデニム企画生産に携わった。中でも97年ジルサンダーからの依頼でデニムを作り高い評価を得た。そして98年、満を持して自己のブランド「Slowgun & Co(スロウガン) / http://slowgun.jp 」をスタート。代官山の6畳4畳半のアパートから始まった。懐かしくて新しいを基本コンセプトに映画、音楽等のサブカルチャーとファッションをミックスした着心地の良いカジュアルウェアを提案し続け、現在は恵比寿に事務所を兼ね備えた直営店White*Slowgunがある。趣味は旅と食と買い物。