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STORY

子供のいる部屋

前職からの有休消化中に、いつもは作れないような時間がぽっかりとできたので、数日かけて部屋の整理をすることにした。20年使っていた大きな木製の棚(というかディスクユニオンで買った1000枚用のCDラック)をふたつ解体して回収、代わりに近所の注文家具屋に相談して本棚を天井に増設してもらった。おかげで壁面や床にスペースができて、幾分かすっきりとしたのだが、そこは6歳と10歳の子供がいる家。細々とした玩具やらペーパーアイテムの散乱がかえって目につく。子供らに片付けをうながしたところで「だって、お父さんの本が一番多いからじゃん!」と燕返しをくらい、返答に窮する。とりあえず、置き場所が決まっていないからマズいのだろう、と小物入れのかごを幾つか用意することに。

 ひとつはアフリカのバスケット。ウガンダ製で、水草とラフィア椰子を編み込んだすり鉢状のかごだ。大して貴重なものでもないが、色目や柄が気に入っている。ここにリモコン類やゲーム機のコントローラーは必ず容れることを約束した。

 これで、しばらく前からソファのサイドテーブルとして使っていたデンマーク製の机の上もスッキリ。深夜にコーヒーのカップや酒のグラスを置けるように、晴れて片付いた。

 もうひとつは18年前くらいにヨーガンレールのババグーリで買ったベトナム製のかご。バンブーをスモークした虫除け効果と黒漆のコーティングを施したマトリョーシカみたいなフォルムが気に入っていたが、なんとなく部屋の片隅でオブジェと化していた。ここに息子の塩ビ人形(怪獣やライダー)類をすべてイン。たまにハサミやしっぽがはみ出しているけど、上々だと思う。

 部屋に住人の生活感があるのは別に嫌じゃないし、無機質過ぎてもかえって疲れてしまうので、適度に片付いていれば問題ないと思っているのだが、放置すると足の踏み場もないくらい床にモノが散乱しているのは気が滅入る。必要なのは習慣を身に付けやすいレイアウトだろう。

 一旦視界に入らないように処理すること自体は「根本的な片付け」とは呼ばないのだろうが、まだまだ断捨離など出来そうもない(するつもりがない)我が家。いずれにしても、子供時代などあっという間に過ぎ去ってしまうのだから、子供っぽいものを親のエゴで家に一切置かないという態度にはあまり賛成できない。ストイックよりも、寛容さ。キャラ物も着ればいいし、別に服育したところでどっちみち子供は勝手に育つ。美しいものはたくさん見せるべきだけど、(親目線で)美しくないものを徹底的に排除するのはちょっと違うんだろうな、なんて。完成形をはじめからひとつに決めつけると面白くないし窮屈だ、というのは何についても同じことが言えるような気がする。大事なのは共存。身長190cmでジャージ姿メインの巨漢体育教師を父親に持つ家庭からも僕みたいに阿呆な服道楽が育つのだから、家庭環境が子供にどう作用するかなんて誰にも分かるはずはないくらい、子供の未来は無限なのだと思う。


Satoshi Tsuruta

NEJI Organizer鶴田 啓

1978年生まれ。熊本県出身。10歳の頃に初めて買ったLevi'sをきっかけにしてファッションに興味を持ち始める。1996年、大学進学を機に上京するも、法学部政治学科という専攻に興味を持てず、アルバイトをしながら洋服を買い漁る日々を過ごす。20歳の時に某セレクトショップでアルバイトを始め、洋服屋になることを本格的に決意。2000年、大学卒業後にビームス入社。2004年、原宿・インターナショナルギャラリー ビームスへ異動。アシスタントショップマネージャーとして店舗運営にまつわる全てのことに従事しながら、商品企画、バイイングの一部補佐、VMD、イベント企画、オフィシャルサイトのブログ執筆などを16年間にわたり手がける。2021年、22年間勤めたビームスを退社。2023年フリーランスとして独立、企画室「NEJI」の主宰として執筆や商品企画、スタイリング/ディレクション、コピーライティングなど多岐にわたる活動を続けている。同年、自身によるブランド「DEAD KENNEDYS CLOTHING」を始動。また、クラウドファンディングで展開するファッションプロジェクト「27」ではコンセプトブックのライティングを担当し、森山大道やサラ・ムーンら世界的アーティストの作品にテキストを加えている。