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STORY

過去形自動車の未来形


先日、ボクのルノーの主治医の所でオイル滲み補修を含む定期検診がありまして、その時に積年の質問、疑問をムッシュに矢継ぎ早にしてみたんです。内容はこんな感じ。『このまま朽ち果てさせるにはあまりに惜しい、美しすぎるデザイン性を持つ車は手を入れれば何とか日常使いに持ち込めるのか?』。旧車を愛して止まないエンスーな友人達は『小林くん、ゼーンゼン大丈夫だよ!』と聞く前から必ず答えは決まっているこの質問にマスター・オブ・イタフラ車はどう答えるのか?興味は尽きないじゃないですか!

では、答えの前にボクがどんな車をイメージしていたかと言うと、例えば60年代から80年代初頭くらいまでの通称『数字ルノー』やプジョー504あたりの痩せたハコスカみたいなフランス車、このあたりの名前を出してみたのでした。(ジャックタチ監督の映画『TRAFIC』に登場する車達が解りやすいでしょうか?)排気量も物によっては2000cc近くあるしキャトルをここまで仕上げられるアイデアがあるムッシュなら何とかしてくれるんだろうの希望的観測の上での質問だったのです。そして気になるその答えは??

『渋滞する東京ではNo  地方ではYes 』

うーん、微妙なニュアンス・・・その心は??

全てはボンネット内の熱処理問題が解決できる個体かどうか?コレだそうです。要するに健康的に走らせるにはボンネット内を常に90度以下に抑えないといけない。その車が作られた60〜70年代のフランスでは気温は夏の最高に暑い日でも30度位にして極めて乾いた空気、路上は渋滞ってナニ??ってな状況。だから当時の車には往々にして小型扇風機程度のエンジン冷却装置、それも走らないと回らない物しか付いていないそうだ。そんな呑気なフランスに対し、 昨今の夏場の東京の交通事情は過酷を極めている。朝っぱらから気温35度、路面温度は40度を超えている。そんな中をうさぎ跳びのような走り方で小一時間耐える、それもボンネット90度を維持しながらだ。キャトルの場合、通常なら走行中の水温は70度位が標準でクーラーをつけると75度から80度に上昇する。冷却装置を2基積んで、現状考えうるカスタムを極めたとしても、90度まであと10度しか余裕がない。そして渋滞に突入だ・・・。この理由を鑑み、ムッシュ曰くの東京日常使いはNoなのである。

そうなると不可能を可能にする方法は以下の2択に絞られる。

① ひたすら冷却装置を積むべくボンネット内を改造しての空間作り、ワンオフでマウント金具制作、発電機増強ナドナド。車種によるが、ムッシュ曰く完璧を狙うならこの熱対策代で約100〜200マンはかかるそうである。目に見えない調整費用としてはひたすら重い。しかし夏場の東京では絶対必要経費なのだ・・・。

② エンジンを捨ててEV化を目指すと言う物、すなわち電気自動車になるのだ。すでにフィアット500、パンダなどは積載キッドが売られ始めている。旧車は車体が小さいのでバッテリーを置くスペースに苦しむそうだが、積載電池性能が向上し、小型化すれば一気に普及とも言われている。まさに昭和の銀河鉄道999号状態!蒸気機関車の皮を被ったテスラも悪くないかもしれない。そう言えば、この旧車EV化計画の話って数年前のAmvaiで書かせていただいてますねー。空想が現実味を帯びて参りましたって事で・・・・。

Manabu Kobayashi

Slowgun & Co President小林 学

1966年湘南・鵠沼生まれ。県立鎌倉高校卒業後、文化服装学院アパレルデザイン科入学。3年間ファッションの基礎を学ぶ。88年、卒業と同時にフランスへ遊学。パリとニースで古着と骨董、最新モードの試着に明け暮れる。今思えばこの91年までの3年間の体験がその後の人生を決定づけた。気の向くままに自分を知る人もほぼいない環境の中で趣味の世界に没頭できた事は大きかった。帰国後、南仏カルカッソンヌに本社のあるデニム、カジュアルウェアメーカーの企画として5年間活動。ヨーロッパでは日本製デニムの評価が高く、このジャンルであれば世界と互角に戦える事を痛感した。そこでデザイナーの職を辞して岡山の最新鋭の設備を持つデニム工場に就職。そこで3年間リアルな物作りを学ぶ。ここで古着全般の造詣に工場目線がプラスされた。岡山時代の後半は営業となって幾多のブランドのデニム企画生産に携わった。中でも97年ジルサンダーからの依頼でデニムを作り高い評価を得た。そして98年、満を持して自己のブランド「Slowgun & Co(スロウガン) / http://slowgun.jp 」をスタート。代官山の6畳4畳半のアパートから始まった。懐かしくて新しいを基本コンセプトに映画、音楽等のサブカルチャーとファッションをミックスした着心地の良いカジュアルウェアを提案し続け、現在は恵比寿に事務所を兼ね備えた直営店White*Slowgunがある。趣味は旅と食と買い物。