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愛憎のスニーカーコンプレックスVANS 『 Haute Couture Slip on 』 M.Kobayashi スペシャル。

昨年、VANS スリッポンの小林フルオリジナル製作&発売という、またとない機会を頂きました。ここからは完全に趣味の世界で暴走した完成までのストーリーです。
まず、テーマを『 Haute Couture Slip on 』といたしまして、敬愛するシャネルゆかりのテキスタイルメーカー3カ国から生地を1反ずつ空輸しました。
イギリスからはリントン、フランスはトゥルニエ、イタリアからはガンディーニと言った具合です。(この段階でお察しの通り商売コスト的には完全にゲームオーバーしております。)まずこの3つの素材を加硫釜にいれて物性テストを行います。通常シャネルスーツを作る生地で120度を越える温度、圧力がかかる事などテキスタイルメーカーは想定しておりません。相当心配でしたがなんとか耐えてくれました。
次にVANS 特有のディテール、サイドテープのオリジナル作成です。どうしても額縁のレリーフにしたかったので4種類のヴィンテージの額を原型師に託し、3Dで作成いたしました。内張はスロウガンのスタジャンで使用するゴールドのファーを敷き詰めました。また、かかと外周に1960年代製のシャネルスーツの裾内側に取り付けてある真鍮チェーンと全く同形状のものを探し出しカスタムできるよう工夫いたしました。オプションでパールもご用意いたしました。さて、ここまでの前代未聞のスリッポン、シューズボックスも抜かりなしです。
まず、イメージとして船旅用のヴィンテージトランクがありました。都内で探しまわった結果、クロコダイル製1904年製造のものが見つかりました。撮影リースに対する保証金は50万円必要でした。リアルクロコが発する最高のオーラをニコンD700で自ら収め画像の加工に入ります。ヴィンテージトランクなのでホテルのシールや飛行機の搭乗札などコラージュいたしました。デザインの全てをL.AのVANS 本社にアプルーバルを取らねばばりません。そして全てがクリアになり、ようやく完成いたしました。このシューズボックスの原価でちょっとしたスニーカーを買う事が出来ます。妥協無く前進すると何が起こるか?良い体験をさせていただきました。ここでまだ終りません。箱詰めする前に私のわがままで、額縁柄のサイドテープにフルハンドで着色することを要望いたしました。せっかくのレリーフがよりマルジェラチックにアート感を漂わす為です。そして遂に完成です。ココ・シャネルがスーツスタイルを確立した1954年〜71年までのちょっとレトロなイメージに上手く着地出来たと思います。複雑な素材使いでありながらアクシデントもなく、クリエイティブ・マインドも十分満たされました。
一点の曇り無きゴールとさせていただきました。ありがとうございます。最高です!