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かろやかな春コート君はピーチスキンを覚えているか?

僕が仕事をしているクラシックファッションの分野では、「90年代リバイバル」がひとつのテーマである。というかむしろ、私自身が声を大にして叫びたい。なんたって1970年代後半生まれのわれわれにとって、おしゃれの目覚めは90年代。社会のなかでわれわれの発言権が高まるほどに、その潮流は勢いを増すのである。モンスター級の資本を駆使してシュプリームとコラボし倒した〝永遠の裏原小僧〟キム・ジョーンズ(1977年生)なんかはその好例といえるだろう。あれはさすがに買えないけれど、アンタの気持ちはよーく分かるよ!
そんなわけだから、これから数年は「渋カジ」や「クラシコイタリア」に関連するアイテムが続々とリバイバルしていくことは決まっているのだが、あえて僕は誰にも思い出されない流行のエアーポケット的アイテムに注目したい。それが「ピーチスキン」のコートである。・・・思い出した?
そう、ピーチスキンとは、ポリエステルに起毛をかけて桃の表面のようなタッチにした化繊生地であり、90年代前半〜半ばくらいのアウターに、実によく使われていたもの。化繊といっても決して安物ばかりというわけではなく、当時はエルメスなどのメゾンブランドもよく使っていたのだ。最近巷で主流となっているパリパリ系の化繊モノに較べるとスポーティさが抑えられて、ちょっとエレガントなんだよね。
最近はゆったりシルエットのステンカラーコートが流行っているけれど、みんなが着ているヴィンテージ風の生地にはそろそろ飽きたから、次はこんなテロッテロのピーチスキンを新鮮に感じている。でも探してもどこにも売っていないから、今のところ古着で手に入れるしかないのが現状だ。
ということで僕が昨年手に入れたピーチスキンの春コートは、90年代の「アレグリ」。インポートではなく三陽商会によるライセンスものなのだが、これが凝ったハイネックといい大ぶりのポケットといいなんとも洒落ていて、今の気分なのである! こんな生地でエルメスみたいなイエローとかオレンジがあったら最高でしょう。どこかつくってくれませんかね?
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