ところで、石田ゆり子さん演じる女性のロマンス的シーンで効果的に使われた曲がユーミンの『 BLIZZARD 』でした。あの曲が流れてくるだけで、“あの頃のバブリーな恋” のイメージがふっとわき上がってくるから不思議です。私にそんなお洒落なロマンスの経験があるわけでもなく、そもそも世代もズレている筈なんですが、これってやっぱり音楽の持つ力なんだなーと思います。
ユーミンついて、「バブルの女王」「恋愛の教祖」なんて評価が “揶揄” に聞こえた時期はあったけれど、“80年代” というカルチャーが今ふたたび見直されているとすれば、あらためて聴きなおすにはいいタイミングなのかもしれません。天才的なメロディーメイカーなのは云うまでもないですが、それと同じレベルで歌詞が素晴らしいと思います。最先端の固有名詞を軽やかにとりあげる言葉選びのセンス、そしてそこから具体的に浮かび上がる情景には、いつしか聴いている者の気持ちまで同化させてしまう力があると思います。
今回のテーマ、“1万円で買えるもの” でオススメしたいのは、そのユーミンの作品集『 Yumi Arai 1972-1976 』。80年代よりもっと前、70年代の「荒井由実」名義の作品をまとめたボックスセットです。デビュー作の『ひこうき雲』から『14番目の月』までのオリジナルアルバム四枚と、シングル曲をまとめた一枚、プロモ映像のDVD一枚という内容。良好なリマスター音源なので、既に何枚か持っている方にもオススメです。
“初期ユーミン” について簡潔に語るとすれば、元々作曲家志望だった彼女を、その才能に目をつけたプロデューサーやスタッフ達が上手いことその気にさせていった過程って感じでしょうか。彼女の決して巧くなかった歌唱法まで、厳しく矯正しながらレコーディングを進めたとの事です。バックバンドは云わずと知れたティン・パン・アレーとその仲間たちだけれども、彼らにとっても、グループを立ち上げてから丁度脂がのり始めたいい頃合いだったのではないでしょうか。フォーキーな曲には乾いた洗練を与え、リズミカルな曲にはブラックな深みをもたらしています。曲、詞、演奏、全てが高い次元にあり、聴き所だらけで何度聴いても飽きない楽曲たち。音楽誌の特集にて “無人島に一枚だけ持って行くとすれば?” ってのがよくありますが、一枚に絞りきれない初期ユーミンをうまいこと一箱にまとめてくれたのがこのボックスです。これさえあれば、優柔不断な私も勇敢なロビンソン・クルーソーになれるかもしれません。
そして無人島から無事帰還した折には、あらためて80'sユーミンを聴きましょう。日本のレコード情報誌や音楽ツウのポップス評って、“幻の名盤” 的なものに偏り過ぎな気がします。ネットのお陰で掘り出し物も出尽くし語られ尽くした今こそ、逆に “時代性をガッチリ抱え込んだ大ヒット作” というのを再評価してみるべきなんじゃないでしょうか。
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