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過去から未来を繋ぐ時計親から子へ。そして孫までの100年。Cartier C.P.C.P Tank Chinoise

昔から憧れている事があります。子供に腕時計を引き継ぐ事なんです。パテックの広告は昔から継承ネタ1本ですもんね。ホントはどんな時計だっていいと思うんです。親からの時計を大切に使ってます!これだけで十分美談です。でも僕には切なる願いがあります。明らかなメッセージを込めて引き継ぎたいんです。これは90年代のエルかフィガロで読んだ気がするお話です。フランスデザイン界の女神、アンドレ・プットマンは敬愛する母より時計を引き継ぎました。プットマンが生まれた1925年はパリ万博、いわゆるアールデコ博覧会の年。すでに運命を背負っている気がします。そんな彼女に母が手渡した時計とはカルティエのタンクシノワーズでした。1922年に発表されたこの時計はフランスに周期的にブームが訪れるシノワズリと呼ばれる中国趣味の美術様式でジュエラーとしても多くのシノワズリ作品を生み出しているカルティエならではのデザイン。そこにアールデコの波で洗練されたまさに中国趣味と言いながらもフランス的な逸品なのでした。決めた!これしか無い!プットマンとお揃いだ!と子供のいなかった頃から継承時計はタンクシノワーズと心に誓いタンク貯金を始めました。まぁ、男の子でも女の子でもこのケースサイズなら日本人でも OK でしょうし。そして2003年、遂に女の子を授かる事となりました。事前に銀座並木通りには CPCP のタンクがあることはリサーチ済みでした。ピンクゴールドであることもパーフェクト。そして当時のセールス担当者と娘が二十歳になったら引き継ぐ事、それまでのメンテ、オーバーホールの計画をざっくり決めて持ち帰りました。ベルトをクロコのヴァーガンディーに付け替えることもその時決めておきました。そんな彼女もあっという間に現在12歳、あと8年で成人です。恐れ多いと思いながらも願わくばプットマンのように芸術、デザインの世界で頑張って欲しい。そして願わくばプットマンのようなすらりと伸びた身長が欲しいものです。女の子は15歳まで背が伸びるそうですしね。小ぶりとはいえメンズ時計なのでマニッシュにスマートに付けこなして欲しい。プットマンとお揃いのフレンチデザインの結晶のようなこのピース、果てしなく高いハードルではありますがこれに負けない大人になってください、と勝手に願いを込めまして・・・。
追伸     このコラムを書いた後、一応ウラを取っておこうとプットマン、母、タンクシノワーズ一連のエピソードをウェブ上での確認を試みました。しかし出ない、見つからないんです。
英語やフランス語でタグ検索してもだめでした。もしや勘違いか?いやいや絶対読みました。誌面の構成までほんのり憶えてます。インタビュー形式でこの場だけで話した私的なエピソードだった気がしてます・・・。