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スタンダードな傑作サンダルいまだ憧れの景色。「げんべい」とブルーダイヤ。

「素敵なビーサンを求めて、サンパウロとサンフランシスコと葉山へ行ってきました。」マガジンハウスの雑誌『 relax 』、2004年6月号の背表紙の言葉だ。毎号なんだかキュンとするような名文句が並ぶこの『 relax 』の背表紙だけど、この号はいたってシンプル。だけども「ビーサン」というチープなモノに「素敵な」という言葉を添えて、それを求めて世界を巡るというストーリーはこの雑誌の持つ独特のヒューマニズムそのものだ。
というわけでこの号の特集は「ビーチサンダル」。ビーサンの起源とその名店、ブランド、そして現行商品の紹介といった内容である。ビーサンの起源については、その形から解るとおり日本の草履を元にしたもので、日本での産業振興のために来日したアメリカのレイ・パスティン氏による考案との事。そして1952年、神戸の内外ゴム社との試行錯誤の末、晴れて “鼻緒付きのゴム製サンダル” が商品化された。「 BEACH-WALK 」と名づけられたその商品は、普及までに4、5年の時間がかかったけれども、やがてハワイを中心に大ヒットしたという。
このビーサン特集号でひときわ目をひくページが、葉山のビーサンショップ「げんべい」の写真だ。前述の内外ゴム社による定番品「ブルーダイヤ」など、色とりどりのビーチサンダルがびっちりと陳列されている。雑誌で出会った景色に憧れを抱くことは決して少なくないが、この “ビーサンの景色” にはなんだか特別なものを感じている。古書を扱う者として、フランス・セーヌ川沿いの古本市「ブキニスト」には無条件の憧れを抱いているわけだが、それを想わせるような迫力、佇まいである。しかし「ブキニスト」同様、「げんべい」にもまだ実際に足を運ぶことができていない。葉山方面にはたまに遊びに行く事もあるのだが、なかなかタイミングが合わないのだ。でももし行けたら・・・既にイメージは出来上がっている。
きびしい日差しの照りつける夏の日、目の前に立ちはだかる七色のビーサンの壁。そこから探し出すのは、蒼いボディに黄色の鼻緒を付けた “素敵な” ブルーダイヤ。会計を済ますとその場で即履き替えて、光輝く砂浜へと向うのだ。